【体験型観光が日本を変える240】持続可能な新しい価値創造 藤澤安良


 師走に入り、日本の新型コロナの感染者数もこのところ低い状態が続いており、宿泊施設や飲食店などもコロナ前と同じようにはいかないまでも活気を取り戻しつつある。

 一方で、感染力が強いと懸念されているオミクロン株は、空港検疫などで水際対策が強化されているが、日本国内での感染者が諸外国から入り徐々に増え続けている。

 同時に、医療従事者からブースター接種といわれる3回目のワクチン接種が始まっている。国民の多くは3回目の接種を希望しており、高齢者は年明けになると思われるが、スムーズな接種ができるように準備を進めてほしいものである。

 コロナの比ではない、生命と財産を奪うのが戦争である。12月8日に真珠湾攻撃80周年を迎えた。ハワイのアリゾナ記念館で式典が行われた映像を見た。その攻撃で沈没した戦艦アリゾナの真上に建設されている。私も数回訪ねたが、本当にあったことなのかと感慨深い時を過ごした。

 第2次世界大戦に日米が本格的に参戦することになった象徴的な出来事であった。その終わりは、オキナワであり、ヒロシマであり、ナガサキである。多くは、年月により風化するものである。

 当時20歳だった人が100歳を超えることとなり、戦争体験者が当時の記憶を語るにはあまりにも年月が経過してしまった。とはいえ、2度と悲惨な戦争が起こらないためにも、風化させることなく、戦争体験者からの体験談を収集し、現代と後世に伝えなければならない。

 それぞれの地にある祈念資料館等は決して1回行ったからもういいという観光地ではない。過ちを繰り返さないためにも、その時々の境遇において、何度も心に刻み再確認したいものである。

 大戦とならずとも、軍事体制下での弾圧、テロや紛争地など、貧困、食糧難、病気、失業など世情が悪く、1年に世界中の15歳未満の子ども1500万人もが死亡している現実がある。日本も、子どもの貧困も、コロナ格差も、異国の出来事ではない。それらの課題を先送りしたり、他人事でいるなら、一部の人だけが裕福であっても、国の風景として決して美しくはない。

 Go Toトラベルがなくても国民のほとんどが旅に出掛けられる、活気に満ちあふれた国づくりが求められている。観光産業界ではGo Toトラベルの再開が待たれているが、コロナ禍のマイナスを補う対処療法にすぎず、終わると旅の機会が下がることは容易に想像できる。

 今後は、消費する旅からお金では得られない心の高まりを目指した旅作りを求めたい。それは食べ放題でも、格安ツアーでもない。観光場所の数やお土産の量でもない。価格競争や物欲的な満足から脱却する「人々の心を高める旅」にしなければならない。

 人に会い、人と交流し、人に学ぶ旅、自らが体験する旅、日本の田舎を深く理解する旅、地元の旬と鮮度を楽しむ旅、歴史を顧みる旅などである。

 SDGsの私の訳は「持続可能な新しい価値創造」である。かじを切れ。それが観光産業の生き残りの道となる。

 
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