【体験型観光が日本を変える225】オリンピックマーチと夏 藤澤安良


 私は前回の東京オリンピックの時に小学生だった。その時聞いた開会式のオリンピックマーチが57年後の今回の閉会式で流れ、当時が思い出され心が躍った。全く色あせない名曲の証であろう。

 小学生の頃、ヒグラシが鳴くと夏休みも終わりに近づき、切ない思いになった。教科の宿題は7月中に終えていたが、その後は連日のように川に魚つかみに行き、昆虫採集に山野を駆け巡り、遊びほうけていた。

 絵日記や自由研究やものづくりの課題が残っており、日記のまとめ書きは、古新聞でさかのぼり気候を確認する有様。そんな苦い思い出なのに、また次の夏も同じことの繰り返しになる。反省しないというよりも、それだけ野外の遊びに駆り立てられたのであり、子ども心を魅了するワクワクドキドキ感に溢れていたのだ。

 今年の夏は特にコロナ禍で自宅に閉じこもる時間が多く、子どもたちが楽しみにしていただろう、帰省も、海や山への旅行も、公園で遊ぶことすら自粛しなければならなかった。どんな夏休みであったのだろうか。そんな中でオリンピックは日本人選手の活躍も目立ち、テレビ観戦は時間の過ごし方として好材料であった。

 しかし、大手ゲーム機メーカーの利益が史上最高となるなど、大人・子どもを問わずゲームに没頭しただろうと予測ができる。中でも、親の知らない間にゲームの課金システムで百万円単位の請求があったという事例もある。

 自然と触れ合う機会がこれだけ少ないと、自然(魅力、恵み、豊かさ、有難さ、偉大さ、脅威)を感じることも少ない。その自然が牙をむこうとしている。 

 例年なら猛暑の下で高校球児が甲子園で躍動する姿があるが、今年のお盆前後から全国各地に大雨が長引き、その甲子園も3日順延となり雨の中の試合も多かった。

 九州、中国、中部と線状降水帯がたびたび発生し、大雨・洪水、土石流など甚大な被害をもたらした。もう、ダム建設や護岸改修工事で間に合うレベルではない。誰もが地球温暖化による異常気象であることを疑わなくなった。

 被害にあった住民は生まれて初めてと言い、観測史上最高、百年に一度から千年に一度という表現に驚きはなくなった。日本は想定外という言い訳を繰り返し、責任逃れをしてきたが、安心安全どころではなく現実は尊い国民の生命と財産が失われている。

 政治家も官僚も日本の田舎がどうなっているのか、事が起こってからではなく、常日頃から山河や海、あるいは漁場や農地に入り現状認識をし、課題を自らの体験で感じ取るような行動が必要である。赤坂の料亭や六本木の飲み屋では分からないことが起こっている。

 ゲームはほどほどにし、自然との関わりをもっと増やすべきだ。自然から学ぶことは山ほどある。ところが、現実は大人も子どもも、生徒や学生も全く足りていない。野菜を1日に380グラム摂取することが望ましいとするなら、私は、1年に50日は自然とふれあう機会をつくらなければ、健全な生き方ができないキャンペーンをすべきだと思う。

 
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