【体験型観光が日本を変える 75】地域組織、人材の役割大 藤澤安良


 5月の第3週、既に梅雨入りしているが、晴れ間がのぞく沖縄を訪ねた。折しも中学校修学旅行のピークの始まりで、関西・山陽方面の空港からの到着便では、1時間足らずの間に5校が降り立った。さらには、企業のインセンティブ旅行や研修旅行、あるいは旅行会社の主催旅行があり、ステッカーを持った迎えのバス乗務員の数は40台分近くにもなっていた。

 本州の空港ではなかなかお目にかかれない観光地ならではの光景である。さらに個人客の多くはレンタカー会社の送迎バスに乗り込む。さすが観光が主産業である沖縄の集客力である。

 その力は、訪日外国人の多さにも表れている。那覇の国際通りはこんな日が来ることを予測していたかのようなネーミングである。その名のごとく外国人が圧倒的に多い。日本人を探さなければいけないぐらいである。30~40年前に海外旅行で訪れた外国の町で、たまに見る日本人に少し安心したことがよみがえる。

 ドラッグストアとディスカウントストアは、レジ待ちで長蛇の列。飛び交う言葉は外国語で、上海でも台北でもソウルでもないはずなのに、どこの国に来たのか分からなくなる。国際通りの土産店のいくつかに取材したが、外国人は土産をあまり買わなくなり、日本の修学旅行生が買ってくれなければやっていけないなどと言う。

 通りに面した居酒屋も、観光地の食堂も、一流ホテルも同じように外国人であふれかえっている。最近、インスタ映えする観光地として脚光を浴びている場所にある食堂で、接客する60歳ぐらいの日本人男性は、私の日本語での注文や話しかけに対する返事が、「NO」だったり「OK」で返ってくる。幸い意味は通じるので苦笑するしかない。

 日本人の観光経済力も上がらず、外国人の爆買いも一巡した今、体験型観光による消費行動の拡大で客単価アップを狙うことが求められている。リピーターが多い沖縄で言えば、本島から離島への流れを拡大し、離島の体験プログラムの整備、ガイドやインストラクターの養成が急務である。

 今回は、その離島のコーディネーター研修会に参加し、話をする時間をいただいた。相対的に若い人が多く、自分の地域のプログラム開発や受け入れ態勢整備に意欲が感じられた。現に、教育旅行が増え続け、訪日外国人を含む一般観光客にも、体験型観光が普及し始めていることから、未来への可能性が描きやすくなっており、他人事ではなく自分事になっている。全国各地のコーディネーターが学ぶべき姿勢であろう。

 体験型観光振興は、体験プログラムのみならず、宿泊、飲食、物産、2次交通と大きく地域経済に波及し、絶大な効果が見込める。さらには、食材や原材料を地産地消(少なくとも県内産)に徹することにより、農林漁業や伝統工芸など多岐にわたって地域の産業の活性化に大きく貢献する。地域コーディネーター組織とその人材が極めて大きな役割を担うことになる。その意識と覚悟があるところに未来が拓かれる。

 
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