【体験型観光が日本を変える 65】農山漁村で労働体験 藤澤安良

  • 2018年3月17日

 乗り物の中でも、町中でも、喫茶店でもスマートフォンの画面を見ている人があまりにも多い。過日は、居酒屋で生ビールのジョッキを傾けながら、仲間と話しながら、スマホを手にして見ている人がいた。そんなに緊急性も、重要性も感じられる様子はないが、何が大切なのか理解しがたい光景であった。

 確かにあらゆる情報が容易に得られる便利さはあるが、それが真実であるかは定かでない。それで物知りになったり、分かったふうな気になったりしている。

 国会では働き方改革が議論されていたが、裁量労働制と高度プロフェッショナル制度が取り沙汰され、議論のもとになるデータの不備が多量に見つかったことから、裁量労働制は法案から外された。会社員でない私はすでに両方やっていることになるが、上司から命令される立場にないことから、すべてが自己責任である。しかし、業種は限られているとはいえ、日本の多くの組織で指示命令系統がある。それが裁量労働者になり得るのか、データの不備以前に、現場での疑問は解決していない。

 労働意識調査で、「なぜあなたは働くのか」の質問に2000年には「楽しく生きるため」と「自分の能力を伸ばすため」が拮抗していたが、2017年では前者が約42%、後者が約10%と大きな差が出てきている。裁量労働制と高度プロフェッショナル制度と「楽しく生きるため」は必ずしも一致してはいない。人数が少なく、期限までに間に合わさなければ、取引停止になるような中小企業と、交替可能、代わりにフォローが可能な大企業とは実情が大きく異なっている。

 1次産業の多くは昔から裁量労働・高度プロフェッショナル制である。森林の間伐、稲作では田の耕起、田植え、稲刈り。野菜生産では種まき、定植、間引き、収穫、果樹では摘果、摘粒、袋掛け、収穫、選別、せん定など多様な仕事を責任を持って行っている。公共放送で不備なデータを基に何時間議論しても、仕事がデータだけで論じられるような、単純なものではないことを知っている国民の理解はもっと先にある。国会議員は現場に行って、上っ面をかすめたような短時間での仕事の真似事ではなく、少なくとも朝から夜まで数日にわたって、前述の仕事を体験すべきである。

 国会議員にとどまらない。公務員も1次産業以外の会社員も、生徒、学生も、異業種であり、体験値の少ない1次産業体験から、仕事に対する理念と誇り、食料生産現場の喜びと労苦、未来への不安、現状の真実を実感する機会となる。得るものも、学びも大きい。そして、その自らの体験で得た生の情報と感想で議論し、日本の未来像、地方のあるべき姿などの国策に生かすならば説得力がある。

 就職後の離職率が高い原因、課題の人間関係も、労働の大変さの理解も、農山漁村での1億総労働体験から始めなければならない。都市住民の余暇活動や社会貢献の場として、ふるさと納税に代わり、地方で人が動く「ふるさと労働」の仕組みも必要である。

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