【体験型観光が日本を変える 60】心豊かにする体験を 藤澤安良


 日本列島に48年ぶりとも言われる寒波が襲来した。太平洋側にも雪が降った。子どもの等身大の雪だるまが作れるほどで、寒さのためなかなか溶けない。スキー場は雪不足を悩む心配がない。

 草津白根山の本白根山で火山噴火が起こり、隣接のスキー場で飛散した噴石により12人もの死傷者を出した。多くの登山者が犠牲になった御嶽山の噴火を思い起こさせるような映像が流れ、現地での緊迫した状況が報道された。

 1月24日の夜、東日本大震災の被災地でもある陸中海岸で、会食中に全員の胸のポケットがけたたましく鳴り出した。青森東方沖を震源地とする緊急地震速報のエリアメールである。その文字を確認するや否や揺れ出した。3秒もなかったと思う。とても逃げるとか、テーブルの下に隠れるとか、考える余裕がなかった。幸いにも震度3で事なきを得たが、時間の余裕が防災への分かれ目であろう。

 気象庁の記者会見でも、地震も、火山噴火予測もいずれも難しいとのことである。精度を高める研究や取り組みが行われているらしいが、地震国でもあり、111の活火山がある火山国でもある日本では、そのリスクと向き合わなければならない。

 半面、日本は火山国であるがゆえに、温泉が多く湧出し、草津温泉のように温泉地、観光地として栄え、人間の心身を癒やしてくれることになる。自然は人間にとっては厳しくもある。災害に対する準備と心構えが大切である。防災意識を高める機会としたいものである。

 天災の予測は難しく、大自然の前に無力な人間であるが、人災は防げるはずであり、それ以前に人災を起こしてはならない。仮想通貨のテレビCMが流れる。古い時代の私には得体が知れないものである。その仮想通貨がいつの間にか、580億円も奪われた。覆面もせず、ガラスも割らず、金庫をこじ開けもせず、犯人はいったいどこの国の誰なのか。26万人もが購入していたというが、そのリスクは想定外であったに違いない。ネット社会の恐ろしさと未熟さを露呈する事件となった。犯人を捕まえ、システム上での再発防止が急務である。管理会社は保証するとの話があり、それが実現することを期待したい。

 このようにバーチャルな世界が広がり、リアルな世界と区別が付かない時代であればこそ、忘れてはならない本物があり、守り通したい真実がある。なかでも、心を豊かにするほんもの体験は、それぞれの人生にかけがえのない多くのものを与えてくれる。

 その重要性を幅広く訴える、第14回全国ほんもの体験フォーラムが奈良県の飛鳥地域で3月24~26日に開催され、全国各地から約千人が参加する予定である。参加者を募集中で、多くの人々の参加を促したい。その場で情報交換し、交流し、個人の心の高まりはもちろん、今こそ、日本の未来や地方の生き残りに何が大切なのか、何をなすべきか、確認する機会にしてほしい。

 
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