【体験型観光が日本を変える 152】新型ウイルスの影響を懸念 体験教育企画社長 藤澤安良


 中国武漢市で発症した肺炎を引き起こす新型コロナウイルスは猛威を振るい、世界中を震撼している。すでに患者は数千人に及び、死者も100人に迫っている。目に見えない飛沫感染と言われているので始末が悪い。

 さらに、中国での旧正月である「春節」に当たることから、14億人の中国で延べ30億人が移動するというから、まさに民族の大移動である。しかし、その予定も中国政府の団体ツアーの渡航禁止命令により、大きく減少することになる。少なからず、当てにしていた日本でも団体のツアーキャンセルが相次いでいる。

 このまま手を打てず拡大を止められなければ、半年後の東京五輪にも影響を及ぼしかねない重大な事件である。世界各国が協力して病原菌の撲滅と患者の回復に全力を投入しなければならない。一刻も早い終息を祈るばかりである。

 その一方、春節の影響が出ない前に北海道標津町を訪ねた。2002年から例年実施している、体験プログラムガイド・インストラクター養成講座を行うためでもある。

 当地には漁業ハサップ、鮭(さけ)の町、サーモン科学館、北方領土、酪農、アウトドアアクティビティ、鮭の人工ふ化が進み回帰率も高い忠類川に、比較的緩やかに流れる標津川、ポー川は日本遺産に申請中のカリカリウス遺跡の中に流れるなど、見どころや体験プログラムは枚挙にいとまがない。

 今回の来訪時には本来ならスノーシュートレッキングの実践研修を実施する予定であったが、当地もご多分に漏れず雪不足。スノーブーツトレッキングを行い、少ない積雪の山歩きをすることとなった。居住地からわずか1キロも入れば、見慣れたはずの山にも発見は多い。

 キタキツネやオゴジョの足跡、エゾモモンガやアカゲラの巣穴、コウモリやネズミの糞(ふん)、アカゲラとゴガラはその姿も確認できた。エゾシカの角研ぎ跡や激寒の地ゆえに見られる凍裂も見られた。わずか25キロ先(標津港からは24キロ)には北方領土の国後島が望め、2500戸を超える竪穴式住居跡・カリカリウス遺跡が存在するポー川自然公園である。

 参加者は全て地元ガイドであるから、毎年訪れる冬の姿である。しかし、目をこらし、足下を見つめ、木の枝先の野鳥を追い、空を見ると、多くの発見と感動があることに気づく。ガイドが触れるべき話題や案内すべき事柄は30項目にも及ぶ。つまりは、話題と魅力がいっぱいだと気づくことになる。

 春から秋には植物生態が本州での高層湿原にあたる高山植物の花が咲き、カナディアンカヌーでポー川を探勝するなど楽しみがあるのだ。それらがない雪に閉ざされた冬はどうするのだ、という課題の結論でもある。

 冬の良さを発見する身近な里山トレッキングをすることは、四季ある国の日本は皆が冬眠しているわけではなく、春への準備をしたり、冬があってこその四季である。いろいろな動植物の営みがあることを知ることになる。ウインタースポーツの適地以外は冬を蔑ろにしがちである。冬をもっと売るべきだ。

 
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