【体験型観光が日本を変える 110】天災と人災に対応できる力を 体験教育企画社長 藤澤安良


 大量の土砂崩れによる惨状の記憶が覚めやらぬまま、北海道胆振地方中東部でまたもや震度6弱の地震が起こった。「天災は忘れた頃にやってくる」の例えに合わないことであり、過去の体験を生かすためにも「天災忘れるべからず」である。

 人災は防げるものであり、起こさない知恵と努力が必要になるが、DVや虐待の結果、母親や自分の命を守るために父親を殺したという事件があった。親が子どもを虐待するケースは後を絶たず、表沙汰になっただけでも13万3778件と増加の一途をたどっている。

 一番親密でなくてはならない親子の中で殺しあうようなことあらば世も末である。親が子を守らずして誰が守るのか。子が親を敬いたくてもそうならないのは悲しいが、どこかで防げたはずの分岐点があったに違いない。

 「鉄は熱いうちに打て」と言うが如く、大人になってからも大事だが、幼児教育や学校教育の時代に人間教育があまりにもおろそかになっている。夢中になっている相手は人ではなく、また真実の世界ではなく、スマートフォン(スマホ)やゲームなど自分で体験していない情報やバーチャルの世界だ。

 生身の人間と遊んだり話したりする機会が減り、その分をメールのやりとりに頼り、文字面やハートマークの乱用で人間関係ができているのではと錯覚しているようにも思える。

 人間関係力はスマホでもゲームでもテレビでもできないことを理解すべきである。人と人が直接会って交流しコミュニケーションすることでしかできない。つまりは、子どもたちの今の生活ではかなわぬこととなり、学校教育の中でのとりわけ特別教育活動での体験交流が極めて重要な時代である。

 そんな時、1月8日の官報で2019年度、都会の子どもが田舎暮らしへの関心を持つように、小学生のみならず中高生にまで広げて学校教育で農山漁村体験を充実させるとして、4泊5日の体験活動を地方創生推進交付金で後押しをするとしている。

 交付金での措置はいいが、格差社会が拡大する中、保護者の負担が多ければ参加率に大きく影響し、せっかくの趣旨が損なわれることになる。また、その体験を受け入れる地域がなくてはならない。そして、その理念を理解し、安全で教育効果が高い地域の育成が求められている。

 これは、内実はともあれ、農泊、渚泊推進事業で手当てをしている。

 学校は日々仕事に追われ、この上に余計な行事が入り、先生の最も苦手とする教科外の体験学習は行事の企画に苦戦することになる。

 企画から実施に至るまでのプロセスをコーディネート組織が、学校に代わって行うぐらいでなくてはならない。この事業を通じて、課題の人間関係構築能力や生きる力を育む人間力向上につながり、わが国の青少年健全育成に大きく貢献することにしなければならない。

 
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