女性がハンドルを握るバスを見かけると「珍しい」と思われるのではないでしょうか。国内の女性バス運転手は100人中1、2人の割合です。バス運転手全体の平均年齢は50歳に迫る勢いですから、中高年の男性の仕事というイメージが定着しています。しかし、男女比は5対5、若者からシニアまで満遍なく運転手がいるという諸外国も多数ありますので、バス運転手という仕事は決して男性でなければできないという訳ではありません。
中には「女性には無理」とおっしゃる方もいらっしゃいますが、その主な理由は「女性は運転が下手だから」「女性に大きな車体を動かすのは無理だから」「ワンマンだから何かあったとき、女性では頼りない」「渋滞で運転時間が伸びたらお手洗いが困るのでは」「女性用の勤務体制を導入すると男性にしわ寄せが行くから」「男性の職場に女性が入ると問題が起きるから」などです。
まず、女性は運転が下手、大きな車体は無理というのは思い込みとしか言いようがありません。現状、新車のバスはほぼオートマチック車で運転は普通車とさほど変わりません。約12メートルの感覚（6メートル台のバスもあります）を覚えれば良いのです。また、一昔前と違いステアリングやギアは軽くて柔らかく、格段に運転しやすくなっています。そして、人口の半分は女性であり、「車が好き」「運転が好き、得意」「大きな車体を動かしたい」という方もいらっしゃいます。何かトラブルが起きた際は、無線で連絡すれば営業所からヘルプが来る体制を整えているはずですし、お手洗いは水分コントロールで自己管理しつつ、自然現象ですから、これらは男性も同様なはずです。
これからは男性も介護休暇や育児休暇を普通に取る時代になるでしょう。離婚し、子どもを引き受け育てる男性も増えると予想されます。男性だから女性だからという線引きはなくし、誰もが気持ちよく働ける勤務体系、職場環境を実現しなければなりません。ましてやセクハラなどのハラスメントは根絶しなければなりません。
近年、女性バス運転手は微増しています。「女性の運転手さんは運転が丁寧でいいね」「アナウンスが繊細で聞きやすいね」「お年寄りや子どもたちにも親切だね」などと引っ張りだこなのです。もちろん、男性でもソフトな運転、対応をされる方はたくさんいらっしゃいます。結論、女性「も」バス運転手に向いているのです。
（リッツＭＣ代表取締役社長兼女性バス運転手協会代表理事）
