【令和時代における交通インフラの人材採用46】女性運転手に必要な「ウェルカム体制」 女性バス運転手協会代表理事 中嶋美恵


 前回、前々回では、女性のバス運転手を増やすには、ハード面、ソフト面両方の改善が必要であることを書かせていただきました。しかし、実はもっと大切なことがあります。それは「ウエルカム体制の充実」です。

 近年、バス事業者は女性バス運転手確保のため、本社上層部、人事部や総務部、また現場の営業所内勤部署でも非常に尽力されていらっしゃいます。これだけの準備をしたのだから、女性を採用しても定着してくれるだろうと考え、実践されるのですが、残念ながら入社後すぐに退職してしまう女性は少なくありません。

 その原因は「職場の居心地」にあります。居心地の良い職場とは、「自分の居場所がそこにあると感じられる。周囲の人々が好意的に自分を受け入れてくれている」と、そこで働く人が率直に感じられる場所でなければなりません。

 女性が居心地良く感じる職場とは具体的にどのような要素が必要でしょうか。まず、自然とあいさつが交わされ、笑顔で雑談しているかどうか。分からないことを尋ねたとき、嫌な顔することなく親切丁寧に教えてくれるかどうか。体調がすぐれないときや何か悩んでいるとき「大丈夫?」と気遣ってくれるかどうか、など若手もベテランも、男性も女性も、そこで働く誰もがイキイキと働いているかどうかがポイントです。

 当然、パワハラやセクハラは存在してはいけません。女性バス運転手協会には時々ハラスメントで悩む女性バス運転手の方からお電話やメールが届きます。しっかりとお話を伺い、解決方法をお伝えしたりもしています。志高く、バス事業者に入社された女性が不当な扱いで苦しみ、傷つき、泣く泣くバス業界を去るのは非常に残念です。

 また、職場で過度な女性扱いをされるのが困るというお話もよくあります。男性の職場に女性が数名加わると意識してしまうのでしょうか。何かにつけて「女性だから」と言われてしまうとかえって恐縮してしまうようです。自然に一員としてそこにいる。そんな雰囲気づくりが重要であると思います。

 女性バス運転手協会として個人個人をサポートすることのみならず、バス事業者の皆さまの環境改善(ハード面、ソフト面、ウェルカム体制)に関してもご提案を重ねています。急激に変わることは難しいかもしれませんが、できるところから一歩ずつ、進んでいくことが求められます。

 (リッツMC代表取締役社長兼女性バス運転手協会代表理事)

 
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