
中国・武漢で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の影響は、この2週間で大きく変化した。当初は武漢のみが感染地域であり、それ以外の地域にまで拡大していなかったが、現在は中国全土において過去15日間以内に滞在歴がある場合にアメリカやシンガポールなどでは外国人の入国を禁止することを発表し、即実行に移した。
日本においては、2月3日現在で武漢を含む湖北省に15日以内の渡航歴がある外国人および湖北省発行の中国のパスポートを所持している場合に入国を拒否するという方針がとられている。
筆者も現在、新型コロナウイルスによる国や観光における状況を調査しているところだが、2019年は中国から日本を訪れた中国人の入国者数が959万人となった。日本へのインバウンド全体が3188万人であることから約3分の1を占めるという状況になっている。
ANAやJALなどの日本の航空会社を利用する場合もあるが、中国からの訪日旅行者の多くが中国系の航空会社の便を利用している。日本人にとって知っている中国の航空会社は、中国三大航空会社である中国国際航空、中国東方航空、中国南方航空の三つに加えて、LCC(格安航空会社)の春秋航空あたりという人が多いだろう。だが実は現在、15近い中国の航空会社の便が日本国内各地に乗り入れているのだ。
上海航空、吉祥航空、厦門航空、深セン航空、山東航空、天津航空、北京首都航空、奥凱航空、四川航空、海南航空、中国聯合航空などといった航空会社である。その中には日本語のホームページを開設していない航空会社もいくつかあり、完全に中国から日本へ送客するための中国人をターゲットにした航空会社も多い。
この1年だけ見ても日本路線を拡大していることから、日本乗り入れ路線の最新ネットワークを調べるだけでも大変で、日々刻々と変わる運休や減便の情報が追いついていないというのが実情だ。
筆者が把握している部分だけにおいても、日本の航空会社よりも早い段階で運休や減便を決めたケースが多くあり、特に地方空港発着路線ほどその傾向が強い。
現時点ではまだ患者数の拡大が続いており、どの段階で中国人観光客が日本に戻るのかという予想すら立てられない状況である。
ただ、中国人観光客に人気がある4月の桜シーズンには間に合わないことは確定的であり、昨年夏からの日韓関係悪化の状況も改善しておらず、今年の春は観光地にとってダブルパンチとなる。影響は長期化することを前提に国内需要を増やすなどの策が必要になってくるだろう。
(航空・旅行アナリスト、帝京大学非常勤講師)