【交通トレンド分析137】ピーチ10周年、国際線復活が待たれる今 鳥海高太朗


 2012年3月1日、関西空港から新千歳空港へのピーチの初便が飛び立った。国内線を運航する初めての国内LCCとして誕生してから10年が経過した。私も10年前の初便に搭乗したが、今やLCCは高速バスの利用者に近い層を中心に支持され、認知度も大きく高まった。安く旅行に出かけることができる強い味方になっている。

 ピーチはこの10年間で累計4千万人の搭乗者を数え、現状では国際線は新型コロナウイルスの影響で全便が運休になっているが、33機体制で国内33路線、国際17路線の計50路線のネットワークとなっている。インバウンドの増加、特に東アジアである台湾、香港、韓国からの旅行者からは人気がある。また、日本の航空会社でありながらも日本人利用者よりも外国人利用者の比率が多く、従来は日本への航空券が高額で日本は好きだけどなかなか来ることができなかった若年層を中心に利用者を獲得してきた。

 コロナ前の計画では、東南アジアの多くの都市へノンストップで飛ばすことができるエアバスA321LR機で成田や関西などから東南アジア便の計画をしていたが、まだ日本人がアジアへ海外旅行として行けるのはタイとフィリピンくらいであり、何よりもインバウンドにおいては全世界から観光目的の入国が認められてないことから国際線の運航再開のめどは立っていない。

 コロナ禍で国際線の運航が厳しいなかで、ピーチは20年夏から国内線の新規路線開設を当初計画よりも早めて次々に就航し、20年8月に成田―釧路、成田―宮崎、10月に那覇―新千歳、那覇―仙台、12月に中部―新千歳、中部―仙台、21年も1月に中部―那覇、中部―石垣、2月に成田―女満別、成田―大分に新規就航した。

 10年目の当日となった3月1日に関西空港で取材をしていたが、この日は大阪府にまん延防止等重点措置が発令されていることもあり、特にイベントも開催されずに寂しさもあったが、私が夜便で関西空港から成田空港までの便を利用したがほぼ満席であったが、改めて感じたのは若者の利用者が中心であり、まさしく長距離高速バス乗り場で見られる客層に近いものがあった。会社の経費で利用できる出張者よりも、自腹で航空券を購入する旅行客や若者の帰省などで利用している人が多かった。LCCのおかげで関西空港、成田空港ともに再びにぎわいを取り戻した。

 今はまだコロナ禍で日本人の姿が中心であるが国際線復活時には多くの外国人のLCC利用者が見られそうだ。

 (航空・旅行アナリスト、帝京大学非常勤講師)

 
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