東京を中心に首都圏で生活している私にとっては、基本的にJR東日本が発行している「Suica」で電車やバスに乗ることがほとんどだ。東京メトロ、都営地下鉄、さらには私鉄沿線に住んでいる人では「PASMO」の利用も多いだろう。さらに私自身は「Suica」をスマートフォンに組み込み「モバイルSuica」を使ってスマートフォン1台で電車・バスを利用している。首都圏だけでなく、大阪や名古屋、福岡、札幌などへ出張や旅行で出かける場合においても、ほとんどSuicaやPASMOなどの交通系ICカードが利用することが可能で、私も東京と同じ環境でスマートフォンをタッチするだけで電車やバスを利用することが可能だ。新たに切符を購入する必要もなく、小銭を用意する必要がなくなるとともに、出張や旅行のときにはそれなりに荷物がある中でスムーズに電車やバスに乗れるのは非常にありがたい。首都圏で利用するときとの大きな違いは、一定金額以下の残高になった際のオートチャージ機能が使えない点だけであり、それ以外に不便に思うことはないのが現状である。
半面、地方都市へ出かけると鉄道やモノレール、バス、さらには路面電車などを利用する際には都市によって大きく異なる。例えば沖縄の那覇空港と那覇市内を結ぶ沖縄都市モノレール「ゆいレール」では2020年3月から全国の主要交通系ICカードが利用できるようになった。以前は不便で「OKICA」など沖縄でしか利用できないICカードをわざわざ持っていたが、その必要もなくなった。その他にも路面電車で見ると、私が実際に利用した範囲ではあるが、熊本や札幌、函館、広島、岡山の市電などでも交通系ICカードの利用が可能となっている。ただ松山、高知、鹿児島などの市電での利用はできず、各エリアのみで使えるICカードの利用にとどまっている。私も先日高知で市電を利用した際に利用できずに、両替をして利用したばかりで、キャッシュレス化が進むなかで不便さを感じた。バスについても地方によって使えるケースと使えないケースがある。特に観光客が多く利用するエリアでは使えることにより、日本人はもちろんであるが、海外からの訪日外国人観光客にとっても小銭を用意する必要がなくなり、より気軽に利用できるようになる。関係者に取材をしてみると全国の主要交通系ICカードにおける導入コストが高いという声が聞かれるが、自治体が補助をしてでもICカードが利用できるようになることで利用促進にもつながることになるだろう。
(航空・旅行アナリスト、帝京大学非常勤講師)