【マンスリーリポート 観光の現場 流れを読む 23】ダイバーシティ先進事例 JTBGMTの取り組み


イヤー・エンド・パーティーの様子

社員ネットワーク作りやミドル層の意識改革

 政府が「働き方改革」を推進する中、旅行業界でもその取り組みに力を入れ始めている。日本旅行業協会(JATA)では今年初めて、優れた取り組み事例となる会員旅行会社に対してJATA会長表彰を行った。2部門のうち「ダイバーシティ推進部門」の大賞にはJTBグローバルマーケティング&トラベル(JTBGMT)が選ばれた。外国人を含む多様な人材を活用するJTBGMTの取り組みを紹介する。

■社員同士のダイバーシティネットワーク

 子育て中の社員、外国籍社員、中途入社の社員、といった悩みを抱えやすい環境にある社員に向けて、昨年、「パパママ社員ネットワーク」や「外国籍社員ネットワーク」「キャリア入社社員ネットワーク」を立ち上げた。ネットワークごとにランチ会などを開催し、意見交換をしながら課題を共有している。昨年度末には会社への提言も行った。

 今年度、全社員を対象に1時間単位での休暇を取得できる制度が新設された。パパママ社員ネットワークから子どもの送迎などの時間がほしいという声が上がり、制度実現の後押しとなった。

■外国籍社員が主体となった交流イベント

 JTBGMTは、訪日旅行専門会社であることから、全社員548人のうち外国籍社員が約1割強を占める。その外国籍社員が主体となった交流イベントを年に数回実施している。

 昨年12月の「イヤー・エンド・パーティー」では、7カ国の外国籍社員が自国の年末年始の過ごし方を発表。異文化を学ぶとともに、飲食をしながらにぎやかに過ごし、社員同士のコミュニケーションを図った。

■ミドルマネジメントの意識変革

 ダイバーシティの強みが十分に生かされていない、という課題を抱えていた。そのカギを握るのはミドルマネジメント層。強みを生かす育成、部下のキャリアを考える、自発的なチャレンジの後押し、といった上司としての意識改革に向けた「組織運営職のための風土改革研修」を2017年に実施した。

 事前に全社員を対象に組織診断調査を行い、各組織の現状を把握した上で課長、部長を集め、自らがどう変わり、部下といっしょに組織をどう変えていくかを議論しあった。フォロー研修では、その後の行動変容や好事例について共有した。

■変形労働時間制

 多様な働き方の推進に向けて16年度から変形労働時間制を導入している。18年度は10種類の勤務シフトが設定され、社員が1カ月の所定労働時間内で自由にシフトを組むことができる。

 7.5時間シフト(標準)=午前9時30分~午後6時。3.5時間シフト=午前8時30分~12時など。8.5時間シフト=午前8時30分~午後6時など。9.5時間午前8時30分~午後7時など。短時間シフトを月1回以上入れるルールがある。長時間シフトは短時間シフトを取得するために必要なシフト。
自身の繁閑を把握してシフトをうまく使い分け、余暇の時間を持つことができる仕組み。メリハリをつけた多様な働き方でワークライフバランスと生産性アップを図る。

 忙しい日に長時間シフトを充てることで、定時内に仕事が終わり、残業時間が減るというメリットもある。

■在宅勤務

 トライアル期間を経て18年度から正式に開始した在宅勤務。新システムの導入によって、ほぼオフィスと同様の環境でパソコン作業ができるようになった。

 社員からは在宅の方が作業に集中できる、という声もよく聞くという。

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 女性や高齢者、外国人など多様な人材を積極的に活用することで企業の成長力が高まり、人材の確保にもつながる。ダイバーシティ推進が今、企業に求められている。

イヤー・エンド・パーティーの様子

【板津昌義】

 
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