国内の新型コロナウイルス感染症が発生して以来、1年以上が経過しましたが、依然としてその脅威は衰えることなく、宿泊市場に大きな影響を与えています。弊会が実施したアンケート調査(全国男女200名に対するインターネットアンケート調査、2021年3月、弊会実施)では、これまで大きな市場を形成してきた、シェアリングエコノミーが、新型コロナウイルス感染症の影響により、大きな影響を受けている可能性があります。他者との共同客室についての意識調査では、以前より重視するとの回答も見られるものの、新型コロナウイルス流行前と比べて、全く重視しないとの回答が17%(以前より非常に重視するとの回答が10%)という結果でした。また、車のシェアについては、全く重視しないが13%(以前より非常に重視するとの回答6%)との結果でした。
上記のように顧客の価値観にまで影響を与えたことが予想される他、密回避やソーシャルディンスタンスの影響より、宿泊市場では個人需要が中心となるマーケットへ変化している可能性があります。つまり個人需要中心市場に対する再確認を、今後観光市場が徐々に回復するにあたって進めておく必要があるはずです。個人市場における認知面での留意点について、以下ではいくつか弊社が実施した調査結果をご紹介したいと思います。
ハードウェア、ソフトウェア、ヒューマンウェア別に好印象と認知されるために必要となる好印象体験の回数について、回数を回答した人に関する3要素、全ての平均値を見てみますと約2.56回という結果でした。一方で不快と認知されるために必要な回数も同様に調べますと、同約1.92回という結果であり、不快体験は、好印象体験と比べてより敏感に捉えている様子が窺えます。また、好印象の場合の3要素別必要回数を見てみますと、ハードウェア2.69回>ソフトウェア2.53回>ヒューマンウェア2.46回であり、スタッフ接遇力は多要素より印象に残りやすいようです。一方で、同様に不快体験については、ハードウェア2.08回>ソフトウェア1.93回>ヒューマンウェア1.74回であり、好印象同様に、不快体験についても、スタッフ接遇力は敏感に反応しています。
また、ハードウェアとスタッフそれぞれについて、ストレスを感じるような体験の宿泊施設に対する顧客態度形成への影響を調べてみますと、ハードウェアのストレスでは「強いストレス」で56%がネガティブな態度(再来訪しない可能性が高い)に繋がっている一方で、スタッフに関するストレスは、それが「ややストレス」と感じる程度でも同63.5%とスタッフ接遇力が大きな影響を与える様子が窺えます。
上記のように個人需要中心市場に向けて、接遇力の確認、また宿泊体験の中で不快体験が潜んでいないか、慎重な確認が求められます。
一般社団法人観光品質認証協会 統括理事
㈱サクラクオリティマネジメント 代表取締役
㈱日本ホテルアプレイザル 取締役
不動産鑑定士,MAI,CRE,FRICS 北村 剛史