
北村氏
今回は、宿泊施設が感染症拡大防止対策を実践している場合の効果について、集客力という観点から実施したアンケート調査結果をご紹介したいと思います(全国男女200名に対するインターネットアンケート調査、2020年10月実施、弊社調べ)。設問では、観光目的で宿泊施設を利用した場合を想定し、▽(1)「観光目的で利用した宿泊施設について、サービス内容や施設が非常に良い場合」、▽(2)「観光目的で利用した宿泊施設について、感染症対策が徹底され、安心感を強く感じた施設であった場合」、▽(3)「観光目的で利用した宿泊施設について、サービス内容や施設が非常に良く、且つ感染症対策が徹底され、安心感を強く感じた施設であった場合」のそれぞれについて、「頻繁に行きたい」、「また行きたい」、「どちらでもない」、「やや他の施設を探したい」、「他の施設を探したい」の5つの選択肢を用意しました。実際に行くかどうかは、その時の状況や目的次第と思われ、上記調査はむしろ、上記のような体験をした場合に、顧客がどのように「感じるか」を調べたものです。
調査の結果、(1)非常に良いサービスの場合には、「頻繁に行きたい」が11%、「また行きたい」が65%と言う結果でした(合計76%)。(2)感染症対策が実践され安心感がある場合、「頻繁に行きたい」が7%、「また行きたい」が57%という結果でした(合計64%)。(3)上記両者とも出来ている場合は、「頻繁に行きたい」が22%、「また行きたい」が52%という結果でした(合計74%)。特に「頻繁に行きたい」との回答が、(1)非常に良いサービスの場合(11%)と(2)感染症対策が実践され安心感がある場合(7%)の合計値である18%以上の22%となっています(約+22.2%)。上記設問を女性のみの回答で見てみます。(1)非常に良いサービスの場合には、「頻繁に行きたい」が13%、「また行きたい」が69%と言う結果でした(合計82%)。(2)感染症対策が実践され安心感がある場合、「頻繁に行きたい」が8%、「また行きたい」が64%という結果でした(合計72%)。(3)上記両者とも出来ている場合は、「頻繁に行きたい」が27%、「また行きたい」が52%という結果でした(合計79%)。「頻繁に行きたい」との回答が、(1)非常に良いサービスの場合(13%)と(2)感染症対策が実践され安心感がある場合(8%)の合計値である21%以上の27%となっています(約+28.6%)。さらに上記設問について60歳代のみ抽出してみますと、(1)非常に良いサービスの場合には、「頻繁に行きたい」が7.5%、「また行きたい」が67.5%と言う結果でした(合計75%)。(2)感染症対策が実践され安心感がある場合、「頻繁に行きたい」が2.5%、「また行きたい」が62.5%という結果でした(合計65%)。(3)上記両者とも出来ている場合は、「頻繁に行きたい」が25%、「また行きたい」が52.5%という結果でした(合計77.5%)。「頻繁に行きたい」との回答が、(1)非常に良いサービスの場合(7.5%)と(2)感染症対策が実践され安心感がある場合(2.5%)の合計値である10%以上の25%となっています(+150%)。このように、非常に良いサービスであり、且つ感染症対策が実践され安心感がある場合には、「頻繁に行きたい」と感じる人の割合は単に合計値ではなく、それを上回る効果、つまり何等かの相乗効果を生み出す可能性があると言え、それは女性、さらには60歳以上のセグメントで特に顕著となっています。女性の顧客層や60歳以上の顧客層では、移動手段についても、バスに懸念を示す比率が高いという調査を依然ご紹介しましたが、新型コロナウイルスに対し他の顧客層よりナーバスであることからも、感染症対策の実践が与える安心感が一層大きな相乗効果を生んでいると考えられます。
一般社団法人観光品質認証協会 統括理事
㈱サクラクオリティマネジメント 代表取締役
㈱日本ホテルアプレイザル 取締役
不動産鑑定士,MAI,CRE,FRICS 北村 剛史
北村氏