【ポスト・コロナ時代に向けた宿泊施設の取り組み17】宿泊予約時における感染症対策について 観光品質認証協会統括理事・サクラクオリティマネジメント代表取締役 北村剛史


北村氏

 依然として新型コロナウイルス感染症の勢いに陰りが見られません。様々な研究報告も提供される中、今後はワクチン開発や治療薬の開発に注目が集まっています。そのような環境にあって、今回は新型コロナウイルス感染症脅威に対する個別宿泊施設の水際対策について考えてみたいと思います。今回の感染症対策としては大きく分けて3つの方策が考えられます。一つは、主に飛沫感染を防御するマスクや3密環境を避ける等の環境的(物理的)対策、そして主に接触感染を防御する手指消毒や接触部位の消毒等の衛生的対策、そして最後に感染を防ぐ個々人の安全行動です。宿泊施設予約時等での水際対策では、環境的対策や衛生対策が機能しないため、安全行動指針の提示が非常に有効と考えられます。ただし、そこでは旅館業法第5条にも十分な注意が必要となります。

 顧客の自己申告あるいは検温の結果、37.5℃以上の場合は、各施設の施設構成、感染症予防体制の状況を鑑み、他の顧客の安全を徹底して守り、また当該顧客にも寄り添った誠実な対応を念頭に、事前に対応策の構築を行う必要があります。なお、旅館業法第5条では、以下のように定められています。

 営業者は、左の各号の一に該当する場合を除いては、宿泊を拒んではならない。㈠ 宿泊しようとする者が伝染性の疾病にかかっていると明らかに認められるとき。㈡ 宿泊しようとする者がとばく、その他の違法行為又は風紀を乱す行為をする虞があると認められるとき。㈢ 宿泊施設に余裕がないときその他都道府県が条例で定める事由があるとき。

 したがって、新型コロナウイルス感染症陽性であることが明白である場合を除いて宿泊を拒否することはできないことになります。そこで、例えば宿泊予約時に、宿泊当日に事前に検温いただき、37.5℃以上の宿泊予約者がいる場合には、利用を控える等顧客側の判断にて感染症予防にご協力をお願いしたい旨、またその際には、キャンセル料をいただきたく場合にはその旨も丁寧に伝えることです。ただし、上記やり取りは、暗に宿泊拒否をと捉えられかねないことから旅館業法違反との関係上、いわゆる「限界事例」、つまり違反か否か微妙なやり取りとなってしまうことから、伝え方や丁寧さ等に十分な注意も必要です。また、予約時の事前情報として来館時に検温を行い、37.5℃以上の場合には、保健所に連絡を行うことにご承諾いただきたい旨等について、誠実でありつつ正確な事前情報の提供も今後しっかりと考える必要があります。上記のような事前情報の発信は、感染症脅威が大変大きい環境の中、スタッフの人命、他の顧客の安全確保を徹底して取り組む意思表示として高い効果が期待できますが、上記のとおり「限界事例」であることから、誠実に丁寧に且つ正確に十分なご説明を行うこと、またそれにご納得いただけた顧客に対して宿泊サービスを提供する姿勢を示しておくこと、さらには上記のとおり「限界事例」であることを十分に留意の上で個別施設での判断となりますが、来館時における感染症対策の貫徹についてもスムーズに実施できるように事前情報が促してくれる可能性を考慮すると、検討に値する対応策の一つとも考えられます。

一般社団法人観光品質認証協会 統括理事
㈱サクラクオリティマネジメント 代表取締役
㈱日本ホテルアプレイザル 取締役
不動産鑑定士,MAI,CRE,FRICS 北村 剛史


北村氏

 
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