【ニューノーマル 新常態の観光戦略6】SNSは国籍含め受け手を意識 元旅行読売出版社社長兼編集長 神崎公一

  • 2021年2月19日

 「カニの漁期はいつまでですか?」「足についている黄色のタグは何ですか?」。

 ある年の冬、旅行メディア関係者らと福井県敦賀市の越前ガニの問屋を見学した際、活発な質問が相次いだ。

 ただ、質問したのは記者ではなかった。主催した観光協会の職員だった。地元の特産品、越前ガニについては詳しいはずなのに、なぜ職員が質問したのか疑問をぶつけると、このような返事があった。「今日の取材は、ブロガーさんが多いのです。前回もそうだったのですが、見学場所で質問が出ずに終わることが多いので、私が水を向けたのです」。新聞記者出身の私の経験からすると、疑問点をたださないまま記事を書こうとすると筆が止まる。いや、今なら、キーを打つのが止まる。そのため「聞くは一時の……」を肝に命じてきた。

 ブログをはじめ、SNSは情報発信の強力なツールだ。紙メディアと異なり、字数制限がないし、画像をふんだんに使い視覚にアピールもできる。そして何より、情報発信がスピーディーだ。こうした特色に目をつけ、多くの観光地や旅館・ホテルなどがSNS発信を強化している。プロの記者、観光客、そして施設関係者自らが発信する場合もある。

 しかし、紙媒体に長く携わってきた筆者にとってSNSは物足りなく感じる。冒頭の越前ガニの取材を共にしたブロガーのコンテンツは「越前ガニ、超カワイイー」などの文章にきれいな画像が添えられていて、極めて直感的、視覚的な内容だった。

 こうした手法を否定するものではない。特に若い層はこれを読んで福井の地を訪れてみたいと思う読者もいるに違いない。その一方、筆者のような感想を抱く人も多いかもしれない。

 総務省の情報通信白書によると、2019年、個人のスマホの普及率は67.6%に達している。60代以上のインターネット利用率も90%を超え、世代間格差が縮小している。シニア層が紙媒体を好む、というのは過去の話だろう。

 この点について、複数の観光関係者に尋ねた。「SNSの口コミでお客さまが増えたなどの話を聞いて、デジタル発信に力を入れた時期もありました。その後、お客さまの年代などに合わせて紙とデジタルを使い分けるようにしています」。

 ただし、インバウンド対策、特に中国を対象となると事情が違う。あるレジャー施設で情報発信担当の中国人スタッフは、中国では口コミが重視、信頼されていると前置きして語った。「中国では家庭での新聞購読率が低い一方、スマホが普及しています。新聞や雑誌の一方的な発信より、スマホを利用したSNSで、情報を得るだけではなく、いろいろな意見やコメントに接したり、レビューを確認したりして、全般の情報を把握できるからです」。

 デジタルか紙媒体かは、情報の受け手の年齢や性別に加え、国籍にも目配りが不可欠であることを忘れてはならない。

 (日本旅行作家協会評議員、元旅行読売出版社社長兼編集長)

     
 
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