【ニューノーマル 新常態の観光戦略3】振り出しに戻ったクルーズの行方 元旅行読売出版社社長兼編集長 神崎公一

  • 2020年11月21日

 高い(費用と敷居が)、長い(旅行日数が)、おっくうだ(英語で話すのが)との印象が強かったクルーズ船の旅。それが近年、「クルーズを体験したら先入観が覆った」との声が聞かれるようになった。「毎朝、荷物を詰め直しホテルを移動しなくてよい」「食事込みの値段を考えれば割安かもしれない」など、肯定的な口コミも広がっている。

 一方、インバウンドの右肩上がり増の要因の一つが訪日クルーズ船の増加である。国土交通省のクルーズ動向に関する調査によると、2019年の訪日クルーズ旅客数は215.3万人で3年連続、200万人を突破した。お迎えする側から、お迎えされる側になってみたい。笑みをたたえながら、タラップを降りる外国人客を目にして、そういう思いをはせた人もいることだろう。大型船が寄港すれば、一度に数千人の外国人が上陸し、寄港地ばかりか周辺観光地も大にぎわいを見せ、地域経済に貢献した。もっとも、宿泊は船内なので、経済効果を疑問視する声もあるが。

 その勢いを絶ったのが、2月初めのダイヤモンド・プリンセス号での新型コロナウイルスの感染だった。厚生労働省によると、乗客、乗員計3713人のうち、712人の発症が確認された。物々しい防護服に身を包んだ医療関係者が同船に乗り込む様子は強く印象に残った。これを機に、訪日クルーズ船の日本への寄港は途絶えてしまった。

 筆者は新しい旅のスタイルとしてクルーズを応援している。5年ほど前、1週間の地中海クルーズに参加し、楽しさを実感した。日本人のクルーズ人口は2019年に37.5万人となり、3年連続で年間30万人超えを達成し、裾野は着実に広がっている。それだけに、せっかく芽生えたクルーズの行方が気になる。

 クルーズ代理店を営み、日本人客のためのコーディネーターとして約100回の添乗経験がある喜多川リュウさんは「クルーズの旅は、コロナ禍で振り出しに戻ってしまった」と話す。2000年から、仲間たちと日本のクルーズ人口50万人を掲げ、活動してきたからだ。

 しかし、展望は開けつつあるという。まず、インバウンドについてはこう見通す。「アジア航路でもとりわけ日本航路の需要は高く2021年春の外国客船の日本航路の売れ行きは好調だ。アジア、特に日本は欧米に比べ、コロナの感染者が少なかったため、日本は『安全なクルーズデスティネーション』として、人気がでることは明らかだ」。

 一方、日本人クルーズ客にとって朗報がある。コロナ禍の影響から、2021年予定の乗船料金は例年の30%から40%引きのほか、特典も用意されている。

 国内では「飛鳥Ⅱ」と「にっぽん丸」の運航が11月から再開した。

 Go Toトラベルによって、来春までは国内旅行が活況を呈しそうだが、いつまでもGo Toトラベルが続くわけではない。新しい旅の形として、クルーズを改めて意識する時であろう。

 (日本旅行作家協会評議員、元旅行読売出版社社長兼編集長)

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