【ニューノーマル 新常態の観光戦略14】Zoomに頼りすぎるな 神崎公一

  • 2021年10月16日

 「Zoomでやりましょう」。新型コロナ感染症が猛威を奮うようになってから、当たり前のようにZoomを使うようになった。観光・旅行業界でも、こうしたオンライン会議は盛んだろうし、自治体の観光部局などがZoomなどによる情報発信を行っている。コミュニケーション手段のインフラに発展した感がある。

 筆者も昨年夏前に戦々恐々と初参加したが、慣れればなんということはない。国境を越えての交流もたやすい。日本語の同時通訳付きで、中国四川省の観光説明会に日中両国の200人ほどと共に参加した経験もある。オンラインによる情報発信は、YouTubeなどを駆使してアピールすることも可能だ。

 まさに「百聞は一見に如かず」であり、「一見」が写真=静止画でなく音声を伴った動画であるところが、視覚的効果を生むのだろう。

 しかし、筆者はもろ手を挙げてZoomによるウェブ会議に賛成はできない。オンライン会議は社内会議のような形式と、主催者のみが情報発信して、視聴者はチャットやメールで随時、質問や意見を述べる形式があるが、特に後者に疑問を感じる。

 これまで筆者は数多くの観光説明会や記者会見に参加してきた。そんな中で実際に苦言を呈したのが、北関東のある県のプレゼンでの担当者の次のような発言だった。

 「それでは私共が説明するより、動画を見ていただきましょう」。動画とは地元テレビ局が放映した旅番組の一部だった。内容が薄いし、面白くない。限られた放映時間の中であれこれ盛り込むから、登場した旅館の女将や観光施設の方たちの説明も中途半端で魅力が伝わってこなかった。

 動画終了後に改めて説明があるかと思いきや「ご覧いただけましたか。それではプレゼンを終わらせていただきます」。つまり相互にやりとりする双方向性が薄いのだ。

 筆者が駆け出しの記者だったころ、あるやり手の先輩はこう言った。「資料をもらえば30行、電話を掛けたら60行、現場に行ったら90行」。取材先からニュースリリースなどの資料提供がある場合、補足の電話取材をした場合、さらに取材相手や現場に足を運び、写真撮影をすれば臨場感あふれる90行の記事が書けるとの意味だ。当時は1行14文字だと記憶するから1200字強、原稿用紙3枚に相当する。

 当事者の肉声による話が聞け、こちらの疑問点を問いただし、さらに他の参加者からの質問によって、自分には思いも寄らなかった視点を得ることができる。そうすることで、旅行会社は売れる商品を企画でき、メディアはコクのある記事を書くことができるのではないか。

 Zoomの利点は、感染予防のほか、会社や自宅に居ながらにして情報交換ができたり、情報収集が可能だったりと数多い。しかし、双方向ではない一方的な情報発信では、効果が半減することもある。まだ、発展途上だと思うが、動画撮影に不慣れな担当者が温泉や風光明媚な景観を伝えたとしても、テレビやウェブで素晴らしい映像を見慣れた利用者には食い足らない。アフターコロナ時代に花開いた新しいツールも上手に使ってこそ、大きな武器となるのだろう。

 (日本旅行作家協会理事、元旅行読売出版社社長)

 
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