「軽羹」と「軽羹饅頭」
鹿児島県は100以上の蔵元を数える焼酎王国。辛党の国だが、「軽(かる)羹(かん)」「春駒」「あくまき」「高(こ)麗(れ)餅(もち)」「げたんは」など郷土色豊かな独特な郷土菓子でも知られている。
代表するのが地元特産の上質なヤマイモ(自(じ)然(ねん)薯(じょ))と米粉、白ザラメ、砂糖を混ぜて蒸し上げた真っ白い棹(さお)菓子の「軽羹」である。
色も形もシンプルだが、鹿児島では多くの菓子店で製造販売。しっとりして上品な甘さや高級感から進物に使われ、またおやつやお茶請けに地元や出身者に広く長く愛されている。
元祖の店が安政元年(1854年)創業の明石(あかし)屋(や)。鹿児島市の天文館に大きな本店をはじめ市内に10余の店舗を構える老舗である。
薩摩藩主・島津氏が江戸に滞在の折、人に紹介された播州(兵庫県)明石出身の菓子職人・八島六兵衛の腕を見込んで鹿児島に招き寄せ、御用菓子司に取り立てる。六兵衛は出身地の地名を屋号にして励む。
「美(お)味(い)しくて栄養があり、保存のきく食べ物を」と命じられて苦心の末にできたのが、粘りの強いヤマイモを生かした「軽羹」である。羊(よう)羹(かん)に比べて重さや食感が軽いことからこう呼ばれたといわれる。
純白で、しっとり、ほのかな甘さ。希少なことからもっぱら献上や接待に用いられた。口にできたのは藩主一族や側近の者たちで、”殿様菓子”と呼ばれた。
庶民の口に入るようになるのは明治維新以降のことである。
鹿児島に広がる火山灰土壌のシラス台地は、土地は痩せているが水はけがよく、根を土に潜り込ませて生育する作物には好都合。ヤマイモは粘りの強い品種が育った。
これを生かしてふっくら、もっちり、しっとりした独特の風味の軽羹生地の中に、甘い小豆のこし餡(あん)を包んで蒸した「軽羹饅(まん)頭(じゅう)」が登場したのはのちのこと。幅広い層に大いに好まれた。
市内の明石屋をはじめ「かるかん」や「かるかん饅頭」を製造販売する店が多数出現。鹿児島空港や鹿児島中央駅など土産売り場には多種並んでいる。
カスタードクリーム入りの「かすたどん」で有名な薩摩蒸氣屋もうまい「軽羹饅頭」で知られる。
(紀行作家)
【メモ】「軽羹」=明石屋(099.226.0431)。8号(0.35キロ)1782円、「軽羹饅頭」8個入り1944円。どちらも常温、税込み、取り寄せ可。

「軽羹」と「軽羹饅頭」

風格ある「明石屋本店」




