【ニューノーマル 新常態の観光戦略 2】盲点、多言語発信の難しさ 元旅行読売出版社社長兼編集長 神崎公一

  • 2020年10月17日

 「中国語のウェブサイトが完成しました」。東北地方のある観光協会幹部から弾んだ声で電話があった。インバウンド対策の一環として、中国人観光客が重点だと聞いていたので、サイトをのぞいてみた。アクセス案内はグーグルマップを使っている。しかし、中国本土ではグーグルやラインなどいくつかのサービスは規制がかかり、閲覧できない。せっかくの労作なのにと気の毒だった。

 別の観光施設の中国語サイトを見た中国人の友人がこう言い放った。「中国語の翻訳が滅茶苦茶だよ。すぐ直さないとイメージダウンだ」。それをやんわり伝えると、自動翻訳に頼って作ったとのことだった。

 いずれも数年前のことで、外国人が急増した昨今は、さすがにこうした事例は減ったかもしれない。

 インバウンド対策として、多言語でおもてなしをという姿勢は大切だし、大いに推進すべきだ。しかし、正しい翻訳、適切な説明でないと、逆効果になる。特に、訪日外国人にとって災害情報は重要だ。台風や大雨、地震などの自然災害時には迅速で正確、詳細な外国語の情報発信が欠かせない。災害時に空港や東京や新大阪、京都などの駅で途方に暮れている外国人の姿が報じられたのは記憶に新しい。

 ちょっと脱線するが、シルクロード取材で、親しくなった日本語ガイド、謝君のエピソードを記そう。私は帰国後もメールをやり取りし、彼の日本語の添削を続けていた。ある時、こんなメールが届いた。「先生お変わりありませんか。こちらは小雪が舞っています。日本も寒さが増していると存じますが……」。

 ここからが問題部分だった。「先生、風邪なんかひいてないだろうな」。私は苦笑しながら、「風邪などひいていませんか? 丁寧な表現なら、お風邪を召していませんかと書くのだよ」と伝えた。彼ほどの日本語の熟達者でも外国語というのは難しい。

 インバウンドはFITが多く、添乗員やガイドが案内してくれるわけではない。旅はスマホやネットが頼りだ。間違った情報でせっかくの日本旅が台無しになっては申し訳ない。

 最後にもう一つ。人気スポット、築地市場の最寄り駅、東京メトロ築地駅のホームで、スマホ片手にウロウロする外国人が目についた。2年ほど前のことだ。彼らの目的は築地市場。駅の掲示は「Metropolitan Central Wholesale Market(現在はTsukiji Outer Market)」。非英語圏の外国人はこの表記では分からない。私は勤務先が築地だったので、週に2、3回は彼らに話しかけた。「フィッシュ・マーケット?」。これだけで「アリガトゴザイマス」と笑顔が返ってきた。築地駅の掲示は正しいだろうが、魚のデザインで「Fish Market」で十分だろう。正確であることは言うまでもないが、きちんと伝わること。インバウンドを期待するなら、このことを忘れてはならない。

 (日本旅行作家協会評議員、元旅行読売出版社社長兼編集長)

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