【テツ旅、バス旅 14】乗り放題とひとり旅 旅行総合研究所タビリス代表 鎌倉 淳


 JR西日本が発表したフリーきっぷが注目を集めています。「JR西日本どこでもきっぷ」という名称で、新幹線、特急も含めて同社線が乗り放題。3日間有効で価格は2万2千円という夢のような設定です。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で発売見合わせとなりましたが、鉄道ファンの度肝を抜きました。

 JR線の乗り放題きっぷといえば「青春18きっぷ」と「フルムーン夫婦グリーンパス」が有名です。しかし、青春18きっぷは普通・快速列車のみ乗車可、フルムーンは夫婦あわせて88歳以上のみ利用可と、それぞれ厳しい制約があります。これに対し、「JR西日本どこでもきっぷ」には、そうした制約がないのです。

 JR本州3社で、新幹線、特急にも乗車可能な全線乗り放題きっぷが、年齢制限もなく、平日も土休日も利用可能な設定で発売されるのは、かなり異例です。新型コロナウイルス感染症で列車の利用状況が悪いなか、JR西日本が前代未聞の「空席活用策」を打ち出したといえるでしょう。

 同社が近年発売してきたフリーきっぷは、2人以上利用可という設定が多くなっていました。2人以上に制限することで、グループやファミリーにターゲットを絞ることができ、極限まで列車に乗りまくる鉄道ファンや、出張のビジネスマンの利用に歯止めをかけていたのです。

 それに対して、「JR西日本どこでもきっぷ」は、1人でも利用可能という設定です。新型コロナウイルス感染症が収束しないなか、おしゃべりしがちなグループ旅行よりも、寡黙なひとり旅のほうが旅行先にも受け入れられやすい、という判断でしょうか。というよりも、このご時世で不急不要の旅に出やすいのは、単身者だけなのかもしれません。

 乗り放題きっぷの魅力は、価格面のお得さもさることながら、乗車区間を事前に決めなくていいので、臨機応変な旅ができることです。行き当たりばったりで列車に乗り、気が向いたら途中下車。1人なら、こうした予定を決めない旅をしやすいので、乗り放題きっぷとの相性は抜群です。

 最近の日本の旅行業界は、ともすればインバウンドの団体ツアーの誘致に力が入りすぎていました。しかし、新型コロナを機に、こうした企画きっぷが考案されて、国内の「ひとり旅」需要が見直されていくきっかけになるかもしれません。

 (旅行総合研究所タビリス代表) 

 
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