【シニアマイスター経営の知恵30】地方からの視座 平野典男


 会社人生30余年、そのほとんどを東京で過ごしてきた。その間、知らず知らずのうちに、中央からの視座が身についてしまっていた。そのことに気付いたのは、5年前に大学教員として沖縄に赴任し、観光学を教えるようになってからのことである。

 東京で航空やホテルの仕事をしていた頃、旅行は観光業界がつくるものであり、地方や海外は人を送り込む場所と捉えていた。中央から地方や海外に送客することによって利益を得る。そのような「発地主導型」の考え方から逃れることができなかった。

 しかし、日本の観光を取り巻く環境は大きく変わりつつある。観光は国の成長戦略、地方創生の柱となった。着地となる地方が主導的に観光地域づくりをすることが必要になってきたのである。

 こうした変化に伴って、昨今DMO(Destination Management/Marketing Organization)が注目されている。

 DMOは観光地域づくりの中核を担う組織で、観光事業者・行政・地域住民らの意見調整や観光地のマーケティング・プロモーションなどを担う。海外ではハワイ州観光局を代表格として多くの先進事例があるが、これまで日本にはなかった。政府は今後、全国各地で日本版DMOの形成を積極的に支援していくとしている。

 ここ沖縄でも本格的なDMOの形成が期待されている。2015年度、沖縄観光客は793万人となり過去最高を記録した。しかし、世界水準の観光リゾート地になるためには、観光ブランドの確立、市場特性に応じた誘客活動の展開、受け入れ態勢の整備など、多くの課題を抱えているからである。

 DMOの形成には、その活動を担う人材育成が不可欠である。産業界や地域のニーズ・実情に通暁し、情報分析力、マーケティング能力、マネジメント能力などを有する人材―その育成のためには、産官学が連携し専門的・実践的な教育プログラムを開発・実践していく必要がある。

 地方の視座からDMO人材を育成する。それが地域の競争力を決める。そのような時代になってきているのである。

 (NPO・シニアマイスターネットワーク会員、琉球大学観光産業科学部教授 平野典男)

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