2020年の東京オリンピックの開催の前に、都心にはラグジュアリーホテルやビジネスホテル、またはコンセプトホテルの新規オープンが続々と続いています。今後も新規開発プロジェクトが発表されており、ホテル業界は今、第3次ホテルブームと呼ばれる時代を迎えています。
その一方で、民泊が解禁されたニュースも耳に新しいのですが、グランピングやオーベルジュなど、異業種から新しい事業展開も相次いでおり、ホテル業界を取り巻く環境は大きく変化しているのが現状です。
観光業を取り巻く経営環境も大きく変化しています。その変化とは、市場は「売り手市場」から「買い手市場」に、主たる商品形態は「観光周遊型商品」から「テーマ・交流体験型商品」へ、そして、販売スタイルは「少品種大量販売」から「多品種少量販売」へと変化し続けています。
顧客の旅行経験が豊かになるにつれ、旅行に対する期待は高まっています。顧客ニーズを的確に捉えて、それに応えることが非常に大切であり、顧客一人一人に合わせて個別化したサービスを提供するなど、サービス業の原点に立ち返った施策が必要となります。
こういった流れの中、ホテル増加ブームの大きな要因にインバウンド需要があります。しかしながら、都心部の外国人に人気のあるエリアではまだまだホテル不足であり、また人材不足も深刻な問題で、増え続けるホテルに対して少子高齢化が進む日本でどのように人材を確保するのかが課題となっています。
このような個別化したサービスや人材不足を補うためAI(人工知能)の導入なども進んでいます。便利で正確、迅速なサービスを提供するAIなどが普及すれば、これらの問題は、解決するのでしょうか? このAIなどが人の提供するサービスやおもてなしを越えることができるのでしょうか? 言葉や動作に現れていない奥底にある顧客が本当に求めるサービスまでは、やはり人でなければ成し得ないと思います。人が人にできる感動するサービスや心遣いは、ホテル業界人が考え続けなければならない重要なテーマのような気がします。
(NPO・シニアマイスターネットワーク会員、株式会社ホテリエスタッフシニア・アドバイザー兼W―makes代表 角谷賢一)