何でもそうだが、同じ一つの状況でも、「○○がない」という見方と「○○がある」という見方の2通りの表現をすることができる。
・私にはお金がない。
・私には健康な体がある。
一般的には「○○がある」という態度が奨励されるが、経営・商売を考える場合、そのどちらの見方も大事だ。
(1)あるものに目を向ける
「これがある、あれがある」と考えることは、それだけでやれる・勝てる自信につながるし、あるものを何でもフル活用、多重活用しようとする姿勢を引き出すことができる。「どうやるか」を考える際に有効なのである。
他方、「これがない、あれがない」という考え方は、始める前から意識ですでに負けてしまっている。またあるものを生かす発想が生まれてこない。だから接客サービスや施設の改善、企画、販売など、すでに「やるべきこと」が決まっている中で、方針を検討したり、具体的な取り組みの推進をしたりする場合は、「あるもの」に目を向ける必要がある。
(2)ないものに目を向ける
ところが戦略レベルでものを考えるとき、整っている要素ばかりに目を向けることは邪魔になる場合もある。
逆説的に思われるかもしれないが、「これだけあるのだから…」という見方からは、現状を打破して新たな世界へ踏み出す発想が生まれにくい。「何をやっていくべきか」を模索するには、むしろ「今、何が足りないのか?」という目で見ることが、「戦略的に付加すべきものは何か?」を考えることになる。
しかしそういうものが何であるかは、自社(自施設)だけ見ていても簡単には見つからない。ないものは見えないからである。
それを見つける手っ取り早い方法は、優れた他社(他施設)を見ることだ。
よその施設を見るとき、料理や運営のアイデアをまねるのも結構だが、それだけではあまり有意義と言えない。より価値あるのは、
「自社(自施設)に欠けていて戦略的に加えるべき要素」を見つけることにある。
(一般社団法人日本宿泊マネジメント技能協会会員 株式会社リョケン代表取締役社長 佐野洋一)