「客室予約」から「旅行予約」へ
エクスペディアの2017年の調査データによると、ホテルにとって客室単体で予約を受けるよりも、パッケージで予約された方がさまざまな利点があるようだ。
売り上げ貢献=客室のみの予約と、パッケージで客室を予約された場合では、パッケージ予約の方が平均客室単価(ADR)が30%以上が高くなる。
早期集客確保=消費者は、客室のみの予約と比べると、平均して1カ月早くパッケージを予約する。それは海外旅行に絞ると2カ月ほど早くなる。
キャンセル防止=客室のみの予約は、パッケージ予約に比べると、2.6倍、キャンセルが発生する。海外旅行になると、それは4倍にもなるとのこと。
こういった調査結果からも分かるように、グローバルホテルチェーンは、OTAなどのチャネルや、他社サイトではなく、ますます自社サイト、公式ポータルサイトでの直接予約に注力するようになってきている。
参考記事https://www.tnooz.com/article/expedia-says-packages-are-better-for-hotels-than-room-only/
マリオット・インターナショナルは、ホテルグループサイト内に「Marriott Moment」というサイトを立ち上げ、トラベルエキスパートたちの旅先でのお薦めのツアーや観光名所をまとめている。そのページから旅先のアクティビティ、ツアーやレンタカーのオンライン予約が可能になっている。
参考https://moments.marriott.com/
また、イベリア航空は、自社サイト内でフライトの予約だけでなく、ホテルやレンタカーが予約可能になっており、公式サイトからフライトを予約すると、予約者個人用のマイクロサイトが立ち上がり、目的地の情報やツアー、ホテルなどをまとめたページが提供されている。
このように、旅行業界において各プレイヤーがそれぞれ自社チャネル内で、消費者の「ホテル宿泊」や「航空券」を単体で販売するのではなく、消費者の「旅行全体」を予約できるプラットフォームを用意している。ホテルや宿泊施設のウェブサイトの競合は他施設のウェブサイトやOTA、メタサーチだけではなく、航空会社のウェブサイトにも拡大してきている。
ホテル、宿泊施設の公式ウェブサイトで「CV獲得」を考える際、客室や、レストランの席だけでなく、ユーザーの旅行全体をプランニングでき、予約できる情報と機能が今後必要になってくると考えられる。
Googleも本格的に旅ナカの獲得に参入したことは、旅ナカ需要が今後も増えることが見込まれるからだと思うが、FITが増える中、直販を増やす取り組みにどのくらい投資できるか。この判断が重要なポイントになる。
(コレリィアンドアトラクト代表取締役)