タイトルにも記載したが、今までの良い宿の条件というのは「風呂(温泉)が良くて、飯(食事)が良くて、部屋が良い」とされてきた。もちろん、この3点は宿選びのベースとしては変わらないのではあるが(その証拠に、ほとんどの宿で、この3コンテンツが閲覧数の上位ページである)、そこにプラスワンの要素がある宿がお客さまに選ばれやすくなっている状況である。
例えば、風呂、食事、部屋3点がベースとして良いということに加えて、非常においしいお酒が飲める。しかも、無料&飲み放題で楽しめる。というプラスワンがあったとする。すると、例えば同じような風呂、食事、部屋が良い宿と迷っている人がいたとして、(なおかつお酒好きな人であれば)確実にそのプラスワンを提供している宿を選ぶというのが人情というものではなかろうか。プラスワンというのはそういう意味である。
プラスワンの要素は非常に自由である。風呂、食事、部屋に加えてという例で出したが、例えば食事の中で表現しても構わないと思う。極端ではあるが、FLコストのうち、Fに極端に力点を置いて、L(サービススタッフの人件費)を抑制して、食事出しのおもてなし感はないが、ただひたすらおいしい地産の肉と魚と野菜を提供する方法なども斬新で面白いかもしれない(宿泊業界では珍しいかもしれないが、飲食業界では原価率を常識破りに高めてコスパを出すことで人気になっている事例もある)。
あるいは、お風呂自体はハードなので一朝一夕で変えることは難しいが、お風呂上がりの体験をプラスワンにデザインしてみるなど。例えば、それこそ湯上がり処を設置して、地元産の地酒やビールを飲み放題にするなどの方法である。
プラスワンの取り組みは成功すれば、必ずお客さまの声に反映される。その声は、また新たなお客さまを呼び、最初はコストがかかるものもあるかもしれないが、まさに損して得とれ状況になる。そして、圧倒的なプラスワンを実現した宿は、元来の風呂、食事、部屋3点が平均より悪くとも、それを上回る集客およびお客さま満足度を獲得することも可能である。
新たな時代に向けて、いろいろと試行錯誤をしつつ仕掛けてみてほしい。
(アビリブ・プライムコンセプト取締役 内藤英賢)