【ちょっと よろしいですか 86】人材確保とSDGsの取り組み ホテル松本楼・松本由紀さん 山崎まゆみ

  • 2022年5月29日

山崎氏

 「旅館甲子園」で3回連続ファイナリストに輝いた群馬県伊香保温泉「ホテル松本楼」。女将の松本由起さんは、「『旅館甲子園』への出場をモチベーションにしてきました」と言います。2019年開催の際には私は司会のお手伝いをしましたので、松本楼の「オリジナルの社員研修」のプレゼンをよく記憶しています。働き手を大切にしている宿という印象を強く抱きました。

 全国の温泉地や旅館で働き手の確保に困るのは、実はコロナ前からです。その点、松本楼は2022年度は306名がエントリーし、4名を採用。「すぐに辞めてしまうのは、お互いに傷ついてしまうから」と、最終面接は松本楼に泊まりがけでスタッフと交流するそうです。さらに入社前には、新入社員の家族まで松本楼に招待するといいます。

 「選挙に例えると、私たち経営者は立候補者で、社員は私たちの後援会。お客さまに投票していただけるように、まずは後援会を固める」というのが松本楼の考え方です。同時に、「社員の夢もかなえてほしい」と言います。事実、経理を担当していた社員が税理士を目指すと決めた時には、税理士事務所を紹介して応援しています。経営者と社員のお互いの夢を相互の協力により実現しているようです。

 ホテル松本楼の前身は、日比谷の洋食店「松本楼」ののれん分けとして、大正時代に伊香保温泉の石段街に開業した「西洋御料理 松本楼」です。伊香保が社員旅行に使われ、旅館が足りない様子を見て、1964年に由起さんのおじいさまが16室の宿として始めたのがホテル松本楼です。

 「幼少期から旅館業を間近で見て、女将として働く母がキラキラしていて、妹にじゃんけんで勝って家業を継ぎました」と、由起さんがうれしそうに語ります。「伊香保では後発ですので、他の旅館が相手にしない若いカップルや、当時は敬遠されていた女性のひとり客をターゲットにしたプチホテル『洋風旅館ぴのん』を1997年に創業しました」と、歴史ある温泉地で新たな客層を取り込む努力もうかがえます。

 「コロナ禍では、経営者としてどう過ごすかが問われている気がします」と前置きし、ここ2年で実施したことを教えてくれました。

 まず2020年3月に子供たちの一斉休校が決まった時点で、宴会場を9時から17時まで開放し、お弁当と入浴付き「学童保育」を開設。子供を持つスタッフや近所のママさんから喜ばれたそうです。

 休館を余儀なくされた2020年4月から5月までは「松本楼学校」を開校。給料は全額支給し、週5日、9時から18時まで隙間なく研修を組んだそうです。最も力を入れて取り組んだのがSDGs。「エコアクション21」取得を目指し、五つのチームを結成しました。

 例えば「食品ロス削減チーム」はお子さまランチを完食するとプレゼントを用意、残った野菜をスムージーにして朝食に、お客さまへハーフポーションの提供、名物ハヤシライスをレトルト化し販売などを提案。「働きがいを考えるチーム」からは資格や研修認定制度の確立、休暇制度見直しなどの要望が出ました。いずれの提案、要望も現在、導入されています。

 力を入れた「防災」については、災害用自販機を導入し、宿泊客100名、社員100名、近隣住民50名の避難受け入れを想定。3日分の食材と水を確保したそうです。

 結果として、「この時にスタッフ全員でSDGsを学んだことで、今では社内の共通言語となり、あらゆる活動の判断基準になっています」と言います。

 今後の由起さんの活動から目が離せません。

(温泉エッセイスト)

 
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