9月に3連休2回、国内旅行に追い風?


 「敬老の日」の19日をからめた17〜19日と「秋分の日」の23日を加えた23〜25日、今年の9月には2つの3連休がある。国内旅行にとっては願ってもない日並び。心配されるのは大震災による旅行自粛ムードだが、旅行会社では「9月の予約状況は前年を多少上回っている」(JTB)と感触がいい。観光地や温泉地の予約を見ると、東北は厳しい状況だが、全般的に明るさが見えている。販売拡大のキーとして各社、各温泉地が口をそろえるのが「間際需要の取り込み」だ。

 阪急交通社の9月単月の予約状況(人員ベース)は前年同月比5%増と、連休効果がうかがえる。ANAセールスも9月の主催旅行商品は人員ベースで前年比2%増、「昨年よりも日並びが良いこともあって、予約が伸びている」。

 9月に入り販売はさらに加速しそうだ。「7、8月と月を追うごとに回復しているが、間際化の進行で予約の本格化はこれから」とトップツアー。近畿日本ツーリスト(KNT)も「先行契約も進んでいるが、間際化もあり、これからまた上積みできる」と鼻息が荒い。

 旅行各社は間際の需要吸収に力を入れる。JTBは、旅行予約サイト「るるぶトラベル」で9月30日までのレイトサマーの需要喚起キャンペーンを展開するほか、出発まで1カ月を切った旅行を店頭やネットで販売する企画商品も積極的に投入する。日本旅行は、ホームページに「9月3連休に泊まれる宿」特集ページを作成。「『すき間』需要を狙っていく」というKNTは、ウェブサイト上で地域別、商品別の特集を組んだり、ウェブ専用商品を投入したりする戦略だ。

 方面別の状況は、日本旅行では九州が約60%増、中国・四国が約10%増と好調。関西は前年をやや上回る。阪急交通社は、九州が32%、中国14%、四国32%とそれぞれ増加するが、東北は震災と原発事故の影響で30%減と振るわない。九州は各社好調で、KNTでも30%弱伸びている。北海道は「例年に比べ弱い」というジャルパックに対し、ANAセールスは「ロングステイ商品が1千人近い予約とヒット」しており、明暗が分かれた。

観光・温泉地に手ごたえ
 震災の影響で、観光地や温泉地は大きな打撃を受けているが、回復の兆しが見え始めた地域もある。8月には企業の休暇の長期化や節電に伴う避暑の旅行需要を取り込むことができ、9月の連休にも手ごたえを感じているようだ。一方で、原発事故の風評などで依然として厳しい状況の地域もあり、早期の需要回復が課題となっている。

■群馬・草津温泉
 「予約の状況はまだ把握していないが、連休はかなり混みそう」と言うのは群馬県の草津温泉旅館協同組合。お盆時期は原発事故の影響で海水浴を敬遠した人が流れてきてにぎわった。「(9月は)夏休みをずらした人もおり、また職場旅行も期待できそうだと」見る。

 間際化の傾向は顕著で「当日、組合に来て『泊まれる旅館はないか』と聞いてくる人が多くなっている。無計画すぎるぐらいだ」と苦笑する。
 草津温泉が標高1200メートルにあり、夏の平均気温が約18度という“涼しさ”をアピールするポスターを作ったが、「猛暑の影響もあってか、効果はてきめん」と組合事務局。ただ、個人旅行が中心で、団体の戻りが悪いのが気がかりだ。「旅館によっても入り込みの差が出ており、企画商品をきちんと造るなど、努力した施設には客が入っている」としている。

■愛媛・道後温泉
 愛媛県の道後温泉旅館協同組合は、「9月の連休の状況はまだ読めないが、間際に動くと期待している。厳しいと予想していた8月の状況が比較的良かっただけに、その反動が9月に出るのではないかという不安も若干ある」と言う。

 今夏は震災に伴う旅行控え、高速道路の割引廃止などの影響を心配したが、7月の宿泊人員は前年同月比97%と健闘した。8月は数字を集計中だが、企業の休暇の長期化や分散化などがプラスにはたらいたのか、お盆をピークに第1週から月末までまずまずの入りだったようだ。

 伝統芸能やコンサートを連日上演する道後温泉夏祭りや、朝市なども定着し好評だった。「震災の影響は大きいが、道後温泉のブランド力は強みだ。秋に向けても需要喚起に努力し、本格的な回復につなげたい」。

■北海道・定山渓温泉
 札幌の奥座敷として旅行客を集める北海道の定山渓温泉。9月は連休に集中して予約、問い合わせが入っており、8月末現在、19軒の旅館・ホテルの半数は連休中満館となっている。

 道内客が約7割を占める同温泉だが、本州と同じく自粛ムードの広がりや、道内景気の低迷などで宿泊単価は下降傾向にある。7〜8月の夏休み期間の入り込み客数は、前年よりも大幅に落ち込むと予想していたが、「間際予約などもあって、前年並みとなった」(旅館組合)。一部ではあるが、明るい兆しも見え始めたようだ。

 北海道の9月は早くも紅葉シーズン。紅葉を楽しんでもらおうと、札幌国際スキー場のゴンドラが昨年初めて秋にも運行した。この「紅葉ゴンドラ」が好評だったことから、今年はゴンドラ利用を組み合わせた宿泊プランなども用意し、「定山渓の紅葉」を売り込む考えだ。

■福島・磐梯熱海温泉
 原発事故の風評を受ける福島県の磐梯熱海温泉。今夏の一般観光客の宿泊に関しては、例年の3割にまで客足を回復させた宿もあるというが、全体として厳しい状況が続いている。

 「9月の連休の需要というより、復興支援を目的にしたイベントや旅行で泊まってもらえるお客さまを受け入れつつ、紅葉シーズン、年末に向けて少しずつでも一般客を回復させていきたい」(旅館協同組合)。

 9月には風評の払しょくにつながると期待されるイベントもある。17日には復興支援を目的にした野外ロックフェスティバルが磐梯熱海で開かれ、人気歌手の福山雅治さんらが出演する。

 「原発事故の収束に大きな問題が起きなければ、こうしたイベントなどを通じて一般客の回復にも方向性が出てくるはず」と期待している。

 
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