mui Lab株式会社とAirbnb Japan株式会社は10月13日、京都市内でホスト不在型の宿泊施設(リスティング)を運営する協力ホストを対象に、騒音センサー「Minut(ミニット)」を活用した騒音モニタリングの実証実験を開始したと発表した。「問題が起きる前に気づける仕組みが必要だ」——両社が共通して訴えるこの考えが、約60施設への機器無償提供という形で動き出した。
音声・映像は一切記録せず、デシベルと時間だけで判断
ミニットは、カメラを使わず、音声や映像の記録も行わない騒音センサーだ。
検知するのは音量(デシベル)と継続時間、接続デバイス数、赤外線による在室状況の4項目のみ。目安として約75デシベルを超える音が10分以上続いた場合にホストへ通知が届く仕組みとなっている。一瞬の大きな音では通知されず、この水準の音が一定時間継続した場合にのみ通知が発せられるため、通常の滞在や会話で誤報が届くことはない。
75デシベルは、東京都環境局および環境省の資料によれば、電車の車内や航空機の機内などに相当する音量水準だ。
センサーが設置されるのはリビングルームや玄関といった音の出やすい空間に限られ、寝室やバスルームなどのプライベート空間は対象外となっている。Airbnbのポリシーにより、センサーを設置する場合はリスティングページでの情報開示が義務づけられている。
約60施設に1年間無償提供、データで「機能するか」を問う
実証実験の概要は次のとおりだ。
対象は京都市内でホスト不在型リスティングを運営するホスト。実施期間は各施設で機器設置開始から1年間。設置場所はリビングルームや玄関で、設置数は約60施設(引き続き参加ホストを追加募集予定)。機器および1年間のサブスクリプション費用を含めた設置費用はすべて無償だ。
両社が実証実験という形式を選んだ背景には、データの不足がある。テクノロジーを含むそうした仕組みが実際にどこまで機能するのかを示すデータは、国内にほとんど蓄積されていない。京都は国内でも観光需要が集中する地域であり、両社はこの課題に先んじて取り組む意義があると判断した。
約1年間で集積されたデータをもとに、騒音の発生頻度とホストの対応時間を定量的に検証し、問題が起きる前に回避できる仕組みやルールづくりに活かすことを目指す。
京都発スタートアップとグローバルプラットフォームの連携
mui Labは「人と自然とテクノロジーの調和」を掲げる京都発のグローバルスタートアップだ。天然木のタッチパネルディスプレイ「muiボード」の開発から始まり、カームテクノロジーを軸に暮らしそのものを心地よくする体験を提供してきた。2026年には宿泊施設向けIoTサービスの提供を開始し、その第一弾としてミニットの国内正規販売・サポートを担っている。
同社が目指すのは、事業者・地域住民・宿泊者の三者が安心して共存できる「地域と調和する宿泊インフラ」の実現だ。
ミニットを開発したのはスウェーデンのMinut社。Airbnbとは2022年より協業を実施し、世界60以上の国と地域でミニットを提供してきた実績を持つ。現在、世界100以上の国と地域・3,000都市以上の宿泊施設で導入されており、今回日本国内で初めて実証実験という形での検証が行われる。
mui Labは国内正規販売店として、ミニットの導入相談・サポートを日本語で行っている。
「誰かを監視する仕組みではなく、気づける仕組みを」
mui Lab株式会社代表取締役の大木和典氏は次のようにコメントした。
「私たちは『人と自然とテクノロジーの調和』を掲げ、暮らしに静かに寄り添うテクノロジーのかたちを京都から探ってきました。宿泊施設をめぐる課題は、事業者、地域に住む方々、訪れる方のいずれかを犠牲にして解決できるものではありません。必要なのは、誰かを監視する仕組みではなく、問題が起きる前に気づける仕組みだと考えています。京都発の企業として、この街の課題にAirbnb Japanとともに取り組めることを心強く感じています」
Minut社CEO兼共同創設者のNils Mattisson氏は以下のように述べている。
「騒音の問題は、近隣に住む方との間に生じる最も大きな問題の1つです。Minutはこれまで100以上の国と地域において、ホストの皆様が問題を早期に対処できるよう、映像や録音を一切使用することなく支援してまいりました。AirbnbおよびmuiLabと共に日本でこの取り組みを検証していく機会を得られたことを喜ばしく思っています」
Airbnb Japan株式会社代表取締役の中川晋太郎氏は次のように語った。
「私たちAirbnbが何より大切にしているのは、地域社会のみなさまからの信頼です。だからこそ、問題が起きてから対応するのではなく、起きる前に気づける仕組みが必要だと考えています。今回の実証実験を通じて、どのような設定や運用であれば現場で無理なく続けられるのかまで含めて、実効性のある仕組みとして組み上げていきたいと考えています」
実証規模の拡大と知見の共有へ
両社は今後、京都市内および他地域においても参加ホストを追加募集し、実証実験の規模を広げていく予定だ。
また、本実証実験を通じて得られた知見は、ホスト不在型の宿泊施設における責任あるホスティングのあり方を考える材料として、地域の関係者と広く共有していく方針としている。




