東京ビッグサイトで開催された「ツーリズムEXPOジャパン2026」は、目標を上回る18万人強の来場で、盛況のうちに閉幕した。
初日、オープニングセレモニーの冒頭、高市早苗首相からのビデオメッセージが流れると、会場はどよめいた。「イン・アウト双方向の交流促進を、そして日本列島のすみずみまで観光客には足を運んでもらいたい」。女性首相ならではの、物腰やわらかな呼びかけは、観衆の心をつかんだ。
今回の式典は、会議棟ではなく、東展示棟の平場に組んだステージで実施された。後方には人垣ができている。重厚なホールと違い、より多くの人に届けられたのがよかった。ツーリズム産業を日本の基幹産業に―。業界の努力が報われようとしている。EXPOは、その道標(みちしるべ)となるだろう。
オープニングのテープカットで壇上に並んだ業界関係者のなかで、ひときわ美しく光ったのが、日本航空の鳥取三津子社長である。どぶネズミ色とは言わないがダークスーツだらけのなか、1羽の白い鶴が舞いおりたようで、おもわず見とれた。現場に女性が多い業界なのに、上に立つのは男性ばかり。男社会が日本のツーリズム産業の実態だ。こちらも道標となるべく、業界に働く女性の地位向上、女性役員の登用が、ますます進むことを期待する。
同日開催された「第9回TEJ観光大臣会合」では、再生型ツーリズムと投資戦略について活発な議論がなされた。持続可能性にとどまらず、”再生させる”という概念が広く浸透し始めている。そのためには自然資源や地域コミュニティ、文化などへの投資が重要で、これからの重点キーワードになりそうだ。
さて、今回のEXPOのテーマ「進化する旅のカタチ」の言葉のとおり、出展者の顔ぶれもさまざまだった。かつては政府観光局や自治体にひもづいた観光協会のブースが多勢を占めたが、今ではデジタルや物流、教育、通信をはじめとした各種サービスもすっかり固定化した。観光ビジネスのすそ野の広さを物語る。
残念だったのが昨年、九龍城(じょう)砦(さい)をリアルに再現して話題をさらった香港政府観光局が、今年は出展しなかったこと。マカオともども、中国駐東京観光代表処のブースに集約された。
目立ったのは台湾ブースで、そしてモロッコ政府観光局はじめアフリカや、中央アジアのゾーンがひと目をひいた。今夏も学生が世話になったタイ国政府観光庁のブースでは、手づくり体験が大人気で、行列をなしていた。
前泊先のホテルに到着したときのこと、フロントでJATAの原優二会長にばったりお会いした。原氏が「風の旅行社」を興したのは35年前。大手でなく、中小の旅行会社から会長職に就いたのは14年ぶりで、多くの会員企業の期待を背負って立つ。
原氏が塾長を務める「旅行産業経営塾」には、門下生に知り合いも多い。聞けば、卒塾生は500人超、その大半がOB会に属して交流を深める。業界横断で切磋琢磨する大切な場づくりに、原氏は自らも汗をかいてきた。
遅ればせながらJATA会長ご就任、ならびにこのたびのEXPOのご成功を、誠におめでとうございます。
(観光ジャーナリスト・淑徳大学経営学部観光経営学科教授 千葉千枝子)




