「大学でしか得られない学びを誰もが身近に」——公益財団法人日本ナショナルトラスト、地域遺産を体系的に学ぶ「地域遺産アカデミー」を10月23日に開講


 公益財団法人日本ナショナルトラスト(JNT、東京都千代田区)は10月23日、JNT初の取り組みとして「地域遺産アカデミー」を開講する。歴史的な建物や町並みに関心を持ちながらも、体系的・継続的に学ぶ機会が限られていた人々に向けた新たな学びの場だ。初年度となる2026年度は新潟大学と協同し、「歴史的町並み」をテーマに全6回のオンライン講座を展開する。開講に先立ち、キックオフ企画として9月26日(土)に東京・北千住でまち歩きイベントを開催する。

約60年の活動から見えた「学びの場」の不足

 JNTは1968年の設立以来、約60年にわたり日本の文化財や自然の風景地などを保全し、次の世代へとつなぐ活動を続けてきた。近年は地域遺産支援プログラム「トラスト・エール」を通じて、全国各地の活動に伴走し支援する取り組みも進めている。

 そうした活動を続ける中で浮かび上がってきたのが、地域と地域遺産を取り巻く状況の大きな変化だ。地方創生や環境への意識の高まり、リモートワークの普及、本格的な人口減少時代への突入など、社会の変化とともに地域との関わり方も多様になっている。各地で建築祭が盛り上がりを見せ、旅や移住、空き家などをきっかけに地域と関わる人をつなぐ取り組みも広がっている。

 こうした流れの中で、地域遺産や歴史的建築に関心を持ち、専門家ではない立場から学びたいと考える人も増えている。JNTはこの流れを、各地のNPOやまちづくり団体が抱える人手不足という課題解決への追い風とも捉えている。

 一方で、地域遺産に関わろうとするとある程度の知識が必要だが、関心を持つ人が体系的・継続的に学ぶための選択肢は限られており、その機会は多くないのが現状だ。「地域遺産アカデミー」はこうした背景のもと、「もっと知りたい」「学んでみたい」と思う人たちの新たな学びの場として生まれた。

新潟大学と協同、「歴史的町並み」を3ステップで学ぶ

 地域遺産アカデミーは毎年テーマを変え、多様な大学等と連携しながら地域遺産の基本知識から活用までを体系的かつ継続的に学べる機会を提供する構成だ。初年度は新潟大学工学部建築学プログラム都市計画研究室と協力し、「歴史的町並み」をテーマに据えた。後援には(公社)新潟県建築士会と(公社)日本建築家協会関東甲信越支部新潟地域会が名を連ねる。

 講座のゴールは、歴史的建物や町並みを自分の目で読み解き、その特徴を捉える力を身につけること。さらに「どう守り、活かしていくか」までを考えることで、地域遺産への関心を深め、それぞれの地域での活動の一歩を踏み出す、あるいは現状の活動を充実させるきっかけとなることを目指す。

 プログラムは3つのステップで構成される。

Step 1「歴史的町並みの基礎を学ぶ」(第1回・第2回)は、2026年10月23日(金)19時〜21時、および同年11月20日(金)19時〜20時30分に開催。日本の歴 史的町並みと、それを構成する建物についての基本的なレクチャー(座学)を行い、各地の町並みの成り立ちや特徴を理解するための基礎知識、および歴史的な建物を判定する基礎知識の習得をゴールとする。

Step 2「歴史的町並みの調査方法を実践的に学ぶ」(第3回・第4回)は、2026年12月18日(金)19時〜20時30分、および2027年1月8日(金)19時〜20時30分 に開催。Google Earthを用いた調査方法のレクチャー(座学・グループワーク)を行う。自ら作業を行うことでStep 1の知識を実践として身につけ、地域の町並みの特徴や歴史的建造物の残存状況を明らかにし、自ら価値や魅力を発見できるようになることを目指す。

Step 3「歴史的町並みの保全について学ぶ」(第5回・第6回)は、2027年4月23日(木)19時〜20時30分、および同年5月21日(木)19時〜20時30分に開催。    歴史的町並みの保全方法や制度、事例に関するレクチャー(座学)を行い、歴史的町並みを守るとはどういうことか、必要な視点を理解するとともに、地域で実践するための最初の一歩を踏み出すきっかけとなる実践的な知識の習得をゴールとする。

二人の新潟大学教授が登壇

 Step 1・Step 2の講師を担当するのは、新潟大学工学部工学科建築学プログラムの岡崎篤行教授だ。東京工業大学を卒業し同大学院修士課程を修了後、東京大学で博士(工学)の 学位を取得。東京都立大学助手を経て2000年より新潟大学に勤務している。専門は都市計画、景観計画、歴史的環境保全。飛騨市古川町や新潟県村上市ではJNTによる町並み調査に従事した経験も持つ。現在は学生と共同でインターネット地図を用いた全国全地域の町屋の外観調査を遂行中で、新潟県景観審議会会長、佐渡市歴史的風致維持向上協議会会長のほか、NPO法人全国町並み保存連盟理事、新潟県まちなみネットワーク副会長、古町花街の会会長などを務め、現場のまちづくりにも取り組んでいる。共著に「歴史的遺産の保存・活用とまちづくり」「観光まちづくり」(いずれも学芸出版社)、「まちを読み解く——景観・歴史・地域づくり——」(朝倉書店)などがある。

 Step 3を担当するのは、同プログラムの松井大輔准教授。新潟大学工学部建設学科を卒業後、東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻博士課程を修了し、博士(工学)の学位を持つ。立命館大学研究員を経て2014年より新潟大学に勤務。専門は都市計画、都市デザイン、景観計画で、歴史的町並みの実態や関連する制度、デジタル技術を活用した支援手法などを研究している。佐渡市と南砺市の伝統的建造物群保存地区保存審議会委員、福島県柳津町の歴史的風致維持向上協議会会長、JNT関連では飛騨市の飛騨の匠文化館リニューアル検討委員会委員などを歴任。共著に「グローカル時代の景観デザイン」「生きた景観マネジメント」(いずれも鹿島出版会)などがある。

キックオフは9月26日、北千住でまち歩き

 アカデミー開講に先立ち、「第1回オフ会」として9月26日(土)に東京・北千住でまち歩きを開催する。集合時間は14時50分で、集合場所は北千住駅西口交番前(東京都足立区)。

 北千住は江戸時代から日光街道の宿場町として栄え、現在も歴史を感じさせる建物や町の痕跡が残る地域だ。当日はNPO法人千住文化普及会の案内人がまちの歴史や見どころを紹介。まち歩きの途中では、JNT職員が建物や町並みをどのような視点で見ることができるのか、そのポイントを解説する。

 まち歩き後には懇親会を開催し、参加者同士の交流を図る。「地域遺産アカデミーへの参加のきっかけ」「地域遺産についてどのような学びを求めているのか」など、参加者自身の関心や期待、どのような学びの場を求めているのかについての意見交換も行い、その結果を講義に反映させる予定だ。参加費はガイド料等1,000円程度と懇親会費5,000円程度。第1回オフ会の申込締切は8月31日(月)となっている。

 また、2027年3月(日程未定)には「第2回オフ会」を新潟で開催予定。歴史的港町で開港5都市でもある新潟のまちを歩き、Step 1で得た知識等を現地で確認するとともに、参加者同士の交流を深める。

参加対象と費用

 参加条件は、歴史的町並みに関心のある方、歴史的町並みを学ぶ意欲のある方であることのみで、専門知識の有無は問わない。一般の方のほか、学生、地域で活動したい方、自治体や中間支援組織等の職員、ヘリテージマネージャー等を広く対象とする。定員は30名程度で先着順。

 参加費は全6回分で一般が10,000円(税込)。JNTのユース会員(年度末年齢満24歳以下)は6,000円、個人会員・対象団体会員は8,000円の開講特別価格となっている。なお、JNT会員価格の適用は事前入会が条件で、年会費はユース会員が2,000円(初年度のみ入会金500円が別途必要)、個人会員が4,000円(同)、団体会員が一口30,000円となっている。オフ会の参加費は別途必要。

 申込締切は2026年10月13日(火)。申し込みはpeatixのページから行い、peatixの会員登録が必要だ。

 本アカデミーで得られることとして、JNTは「歴史的な町並みや、町並みを構成する建物の基礎的な知識を得ることができる」「学んだ知識を活かし町並みの特徴が分かるようになる」「具体的な活動に向けた道筋がつく」「同じ関心を持つ全国の仲間に出会える」の4点を挙げている。

 詳細・参加申込はJNT公式ウェブサイト内の専用ページ(http://www.national-trust.or.jp/news/index.php?c=event_view&pk=1786332057&type=)から確認できる。

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