【日本政府観光局インバウンド最新リポート 135】米国の高付加価値旅行 消費が生み出す価値を可視化 JNTOロサンゼルス事務所 青島美奈子所長


コンソーシアム向けにJNTOが行った日本セミナーで、訪日手配をしたことがあると手を挙げたトラベルアドバイザー

コンソーシアム向けにJNTOが行った日本セミナーで、訪日手配をしたことがあると手を挙げたトラベルアドバイザー

 コロナ禍からの急速な需要回復が一巡した米国旅行市場では、成長率の鈍化がみられるものの、旅行需要そのものは引き続き堅調である。全米自動車協会が2026年2月に公表した調査によれば、39%の米国人が前年より多くの旅行を計画しており、58%が年内に複数回の旅行を予定している。旅行は依然として優先度の高い消費項目であることがうかがえる。

 一方で、米国旅行協会が2026年5月に公表した旅行予測によれば、物価上昇や経済的不確実性の影響を受け、旅行者はより短期間で低価格な旅行を選ぶ傾向を強めている。近距離旅行やドライブ旅行へのシフトも進んでおり、旅行支出を支えているのは主として高所得者層とされる。

 複数のコンソーシアムによると、高付加価値旅行の分野では旺盛な旅行需要が継続している。

 特に家族旅行や3世代旅行、地域文化との接点や本物の体験を重視した旅行、高価格帯商品の販売拡大が目立っているようだ。

 ストレスフリーな旅行は従来からこの層の関心事であったが、地理的リスクや前述の旅行トレンドを受けて安全性の重要度は一段と高まった。日本が相対的に安全な国であることは広く知られているが、それに加え、日米間の航空路線が安定的に供給されていることも、旅行先の選定段階における強みとなっているといえる。

 旅行先での消費に対する価値観にも注目したい。アメリカン・エキスプレス・トラベルによれば73%の旅行者が旅先の地域事業者の支援を重視しているとし、老舗コンソーシアムのヴァーチュオーソは、高付加価値旅行者が豪華さそのものよりも地域文化や人とのつながり、意義のある体験を求める傾向が強まっていると指摘する。

 背景には、社会貢献を重視する米国社会の価値観もあると考えられる。米国の慈善寄付に関する代表的な年次調査「ギビングUSA」によれば、2025年の米国における個人寄付額は寄付総額の約64%、約3942億ドルに達し、社会貢献が米国社会に深く根付いていることがうかがえる。特に富裕層にとって寄付は、個人の価値観や信念を表し、社会的レガシーを築く手段の一つとして位置付けられている。

 旅行に置き換えれば、自らの支出が訪問先の環境や文化、地域社会にどのような価値を生み出すのかが重要な判断要素になり得る。地域の伝統・生活文化、地域経済、生産者や地域住民とのつながりなどを分かりやすく伝えようとする視点が、商品造成の方向性を明確にし、販促活動の後押しにもつながるだろう。

 2025年訪日米国人数は前年比21.4%増の330万人に達し、過去最高となった。しかし、コロナ禍後の急激な回復が落ち着いた今、訪日需要を一過性のブームで終わらせないためには、新たな訪問地や体験価値の提案が欠かせない。円安は追い風ではあるものの、それだけで各地での支出が拡大するわけではない。地域ならではの価値と、その消費が地域にもたらす意義を伝えられるかどうかが、今後の誘客競争を左右するのではないだろうか。

コンソーシアム向けにJNTOが行った日本セミナーで、訪日手配をしたことがあると手を挙げたトラベルアドバイザー
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