【中学校教育旅行特集2026】学校現場の実践例 東京都目黒区立第十中学校(北陸方面/26年7月2~4日)


ホストファミリーと記念撮影

ホストファミリーと記念撮影

 教育旅行は、非日常の環境でさまざまな人と触れ合うことで、生徒にとって絶好の成長の機会となる。自ら計画し、仲間と協力して行動する中で、責任感や判断力などが育まれる。今回は、こうした生徒の主体性を引き出すための修学旅行を実施した、東京都目黒区立第十中学校の実践事例を紹介する。

初の民泊でふれあい実感、保護者の理解・協力も不可欠

 東京都目黒区の南西部、駒沢オリンピック公園の近隣に校舎を構える区立第十中学校(安藤咲織校長)。今年で創立80周年を迎える同校は、教育目標を「自ら課題を追求し、主体的に生きる人間性豊かな生徒を育む」と定め、(1)自ら鍛える生徒(2)求めて学ぶ生徒(3)互いに認め合う生徒―の育成を図っている。こうした方針は学校行事にも反映されており、第3学年が実施する修学旅行も、生徒の成長を見守る教師たちの熱い思いが表れている。

 同校の修学旅行は、コロナ禍前まで関西方面(京都・奈良)で実施。班別の自主行動をメインに、生徒の計画力、問題解決力の向上につながる旅程を組んできた。

 コロナ禍後は同エリアでの観光混雑が深刻化したため、行き先を変更。首都圏からのアクセスが容易で、新幹線団体席も比較的確保しやすい北陸地方に着目し、3年前から金沢方面に切り替えた。

 人間関係が希薄になりがちな都会で暮らす子どもたちに、「人との出会い」や「つながり」を知ってほしいという教師たちの思いから、今年の7月2~4日に実施した修学旅行では、初めて福井県での民泊体験を組み込んだ。金沢での班別自主行動と、民泊でのホストファミリーとのふれあい―。二つの側面で教育機会を与えられるというバランスの良さが、決定の後押しとなった。

 旅行は2泊3日で実施した。1日目は富山市「ますのすしミュージアム」と、岐阜県の白川郷を見学。2日目は金沢市内で班別行動をした後、午後から福井県の民泊に移動した。入村式の後、27軒の民家に分かれて各種体験学習を行った。3日目は、生徒からも希望の多かった「福井県立恐竜博物館」を訪問。曹洞宗の大本山・永平寺にも立ち寄り、名物「おろしそば」を皆でいただいた後、新幹線で帰京した。

 旅前には、当日の班ごとに事前学習を実施した。「白川郷」「永平寺」など六つのテーマから一つを選び、6月には学年全体の発表会も行った。校長・副校長も含めた教師陣や各クラスの生徒を前に、自由形式でプレゼンテーションを行った。

 旅中では、訪問施設ごとに「ミッション」のようなものを生徒が事前に設定し、現場で見学しながら解決し合うなど楽しみ方を自ら取り入れていた。班行動では、貸与されたスマートフォンを駆使しながら班行動を行った。

 民泊では、畑仕事やまき割り、近隣の自然散策や楽器体験など、民家ごとにさまざまな体験が用意された。夜は家族皆でボードゲームをしたり、日々の生活で思うことを語り合ったりと、デジタル社会から離れた「ふれあい」のひとときを楽しんだ。

真剣に農作業を学ぶ生徒
真剣に農作業を学ぶ生徒

仲間と協力して行った調理体験
仲間と協力して行った調理体験

 旅後には、生徒1人ずつ感想文を提出。ホストファミリーとのエピソードや、深い愛情で受け入れてくれたことに対する感謝の言葉などが多く見られた。各民家へのお礼状作成と、班ごとに動画を制作し各民家に送付するなど、感謝を伝える取り組みも行った。

 班別行動で生徒たちが撮影した写真は学校の廊下に掲出し、生徒や保護者に投票してもらう「フォトコンテスト」も実施した。ここで生徒は他の班の様子も初めて知ることになり、思い出話のきっかけとなった。仲間と一緒に福井への再訪を志す生徒も散見された。

ホストファミリーと記念撮影
ホストファミリーと記念撮影

 引率した学年主任の阿部康之教諭は、「当初、民泊体験に対しては保護者から安全性について不安の声もあった。近年は『他人の家にお邪魔する』ことに慣れていない家庭も多く、どのような家庭に泊まるのか、ホストファミリーはどのような人たちなのか、丁寧な説明をする必要があった」と振り返る。

 「こうした保護者からの声に誠実に向き合ってくれたのが、『教育旅行ふくい』の皆さんだった。こちら側の疑問や不安に理解を示し、嫌な顔をせずに対応してくださった」と阿部教諭。目を輝かせて帰宅したわが子を見て、民泊体験における教育の奥深さに気づかされた保護者も多かったようだ。

 旅の成功は、旅行会社の存在も大きかった。阿部教諭は、保護者への旅程説明に加え、現地とのやりとりや困りごとの対応も引き受けてくれたと話す。特に行程づくりでは、施設ごとの滞在時間や体験内容など、学校の目的を達成するためのきめ細かい提案に助けられたという。

 「会社ではなく“人”が決め手になった。最初の説明を聞いて、『この人なら』と思った。旅前から旅中に至るまで、一緒にチームとして関わってくれたことに感謝したい」と語った。

 より良い修学旅行の実現には、学校や旅行会社、受け入れ先だけでなく、保護者の理解・協力も必要だ。阿部教諭は、「保護者も学校も目的は同じ。子どもたちの幸せを願って修学旅行を行っている。学校側の意図を理解してもらうためにも、日ごろから配信される『学校だより』や『学年だより』を見てもらうなどして、保護者や生徒と一緒に作り上げていくという意識が必要だ」と強調した。

 
 

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