アクセンチュアは8月19日、日本を含む世界20か国の経営層と従業員を対象に実施した最新調査「Pulse of Change」の結果を発表した。日本企業のAIへの投資意欲はグローバル水準と遜色ない一方、投資を全社的なビジネス成果へと結びつけられている企業は依然として限定的であることが明らかになった。さらに、従業員がAIの効果を実感できている度合いも、生産性向上・仕事の満足度・リスキリング支援への期待のいずれにおいてもグローバル平均を下回り、人材と組織の一体的な変革が急務であることが示された。
「今後12か月でAIへの投資を拡大する」と回答した日本の経営層は78%にのぼった。グローバル平均の82%と比較しても遜色ない水準だ。
しかし、AI活用によって全社的かつ持続的なビジネス成果を「すでに実現できている」と答えた日本の経営層は13%にとどまった。グローバル平均は23%であり、日本はその水準を大きく下回る結果となった。
AI関連の取り組みが経営会議に報告できるレベルの定量的成果を生み出すことについて「十分または高い自信がある」と回答した日本の経営層も48%で、グローバル平均の55%には届かなかった。
投資意欲の高さと、実際に成果を生み出せているという実感のあいだには、依然として大きな乖離が存在している。
従業員のAI効果実感、グローバルから大きく劣後
従業員レベルでも、日本とグローバルの差は顕著だ。
「AIによって生産性が向上した」と回答した日本の従業員は57%にとどまった。グローバル平均は81%であり、その差は24ポイントにのぼる。「特に変化はない」との回答も37%にのぼっており、多くの従業員がAIの恩恵を実感できていない実態が浮かび上がった。
AIツールの導入後に仕事の満足度が高まったと感じている日本の従業員は48%。グローバル平均の71%との差は23ポイントに達し、生産性と同様に大きな開きがある。
リスキリングをめぐる意識にも特徴的な結果が出た。AIによる職務や役割の変化が進むなか、自身のスキル習得について「企業によるリスキリング(学び直し)には頼れず、自力で行う必要がある」と考える日本の従業員は50%にのぼった。グローバル平均の45%を上回っており、日本の従業員は企業からの学習支援を十分に受けられていないと感じている割合が高いことが示された。
人材確保・育成の難しさ、経営層の64%が認識
人材・組織戦略への影響についても、調査は多くの課題を示した。
AIを使いこなせる人材の獲得や育成に難しさを感じている経営層は64%にのぼり、グローバル平均の62%を上回った。AI活用を推進するうえで、適切な人材の確保と育成が引き続き重要な経営課題となっている状況がうかがえる。
AIの影響で若手人材(エントリーレベル職種)に求められるスキルが変わると考える経営層は87%に達し、グローバル平均の85%を上回った。
一方で、AI活用を前提とした新たな若手向けの職種を創出する可能性が高いとした経営層は60%で、グローバル平均の73%を下回った。若手人材の採用を増やす意向を示した経営層も41%にとどまり、グローバル平均の52%には届かなかった。
若手のスキル変化は広く認識されているものの、新たな職種の創出や採用拡大といった積極的な対応策においては、日本企業がグローバルに後れをとっている実態が浮かび上がった。
「人・AI・ビジネスが共進化し続ける仕組みの構築を」 アクセンチュア幹部がコメント
アクセンチュア株式会社 執行役員 Lead – Talent, Japan の本徳亜矢子氏は次のようにコメントした。
「企業のAI投資を持続的な成果へと結びつけるには、技術の導入や個々の従業員の試行にとどまらず、人の役割や仕事、組織のあり方までを変えていく必要があります。日本企業のAI投資意欲はグローバルと遜色ない水準にある一方、その投資を全社的な成果や従業員一人ひとりの実感につなげる点では、なお課題が残されています。この差を埋めるために日本企業に求められるのは、AIによって実現すべき価値を明確にし、その実現に向けて、人・AI・ビジネスが相互作用しながら共進化し続ける仕組みを構築し、企業能力として確立することです。また、これを従業員一人ひとりの自助努力に委ねるのではなく、企業が学びや役割移行を支える環境を整えることが、AIへの投資を持続的な競争力へと転換する鍵となります」
また、アクセンチュア株式会社 常務執行役員 Lead – AI and Data、AIセンター長の保科学世氏(博士・理学)は以下のように述べた。
「日本企業のAI投資意欲は世界と遜色ないにもかかわらず、全社的な成果を実感できている企業も、生産性や働きがいの向上を実感できている従業員も、世界水準を大きく下回っています。この差は、技術の優劣ではなく、『技術を人と組織にどう組み込むか』の差だと考えています。AI投資を成果に変える鍵は、システム・業務・人という三つの要素を一気通貫で動かし、なかでも人の判断と創造性が活きる場所を意図的に設計し直すことにあります。単純に仕事を削るのではなく、AIを前提に『一段上の仕事』へと引き上げること。リスキリングを個人任せにせず、学び続けられる環境を組織として用意する、人を中心に据えた変革こそが、AI投資を持続的な成長へと変えていきます」
調査概要
「Pulse of Change」は、20か国・19業種を対象に、C-suite(経営層)3,000名と従業員3,000名に対して実施した調査だ。日本では経営層と従業員それぞれ100名から回答を得た。調査期間は2026年4月から6月。変化を引き起こす要因や変化への備えの状況、AIや生成AIといった先進技術とその人材への影響など、事業環境の現状を明らかにすることを目的としている。




