台湾観光局、観光基幹人材育成でワークショップ開催 山下元帝京大学教授を招聘


 台湾観光局(台湾政府観光署)は観光基幹人材育成ワークショップを開催した。8月7日・8日の2日間、台北市内の張榮發基金国際会議センターにおいて実施された。テーマは「Twin Transition: Digital Transformation×Sustainable Transformation」。帝京大学観光経営学科の山下晋一元教授(3月末定年退官)が講師を務めた。

 参加者は台湾の旅行会社とホテルの幹部、観光庁職員、地方政府職員、大学職員の計18名。台湾観光署からオブザーバーとして6名が加わった。
 
 今回のワークショップは、6月から始まった研修プログラムの一部である。計5日間の講義と2回計4日間のワークショップで構成されており、最終的には仙台・青森など東北地方での持続可能な観光地域づくり研修と地元関係者との交流が予定されている。

講義の様子

グループワーク

 

第一日目(8月7日)

 初日はメンバーの自己紹介と、参加者の事前アンケート回答分析結果の共有から始まった。各チームは世界幸福度、国際デジタル競争力、SDGs達成度の最新国別ランキングを比較検討した。世界ベスト15カ国・アジア主要国のランキングをチャートにプロットした結果、4チーム全てがデンマーク、フィンランド、スウェーデンの北欧3カ国を目標とすべき国として選定した。3つの指標がバランスよくいずれも上位にあることが選定理由である。

 続いて山下教授が講義を行った。一人当たりGDP、Smart City Index、国際観光開発指標を加えた詳細なランキング比較を実施した。国際観光開発指標では日本が優位にある一方、それ以外の指標では台湾が大きく優位にあることが確認された。

 講義ではさらに、Digital Transformation(DX)とSustainable Transformation(SX)を統合推進するTwin Transformation(TX)の実現に有効なバックキャスティング手法の重要性が共有された。あるべき姿をビジョンとして明確化し、その実現のための施策を策定・実施するアプローチである。あわせて、客観的なデータをもとに施策を策定するEBPMの手法についても説明がなされた。

 日本の観光競争力向上の原動力となった「明日の日本を支える観光ビジョン」とその後の観光立国政策についても講義が行われた。受け入れ環境として整備できていないことを把握・整備することの重要性と、高付加価値化の大切さが確認された。日本のトイレ洋式化の事例も示しつつ、台湾における衛生面での改善の重要性についても共有された。

 午後には宜蘭、台東、澎湖島、太魯閣の4地域をテーマに、各チームがPESTEL分析とSWOT分析を実施した。メンバー1人ひとりが分担して発表し、活発な議論が展開された。

 その後、山下教授がTwin Transformationの重要性について講義を行った。持続可能な観光地域づくりの基盤となるスマートシティ、MaaS(Mobility as a Service)、自動運転、ドローンなどDXの取り組みの重要性が解説された。スマートシティランキングにおいて東京が98位、大阪が102位であるのに対し、台湾は25位と優位に立っている現状も紹介された。

 台湾政府が積極的に推進する官民一体となった観光MaaSの取り組みについても説明がなされた。世界のMaaS先進事例を紹介しつつ、高雄市のMaaS「Men-Go」の重要性が共有された。道後温泉のデジタル温泉都市実現に向けたTXの取り組みも紹介され、地域として目指すべきビジョンを共有し長期的にTXを計画・推進することの大切さが解説された。

グループワーク

 

第2日目(8月8日)

 2日目はフィンランド、オーストラリア、ニュージーランド、ハワイ、京都のレスポンシブル・ツーリズム(RT:責任ある観光)について各チームが調査・分析を行い、結果を発表した。持続可能な観光地域づくりに責任を持った行動をとり、その向上に貢献する旅行者の役割の重要性が共有された。

 続いて山下教授が持続可能な観光地域づくりの重要性と、それを支える日本のDMO(観光地域づくり法人)の役割について説明した。先駆的DMOの位置付けについても解説がなされた。

 リジェネレーティブツーリズムの成功事例として、楽土庵・出羽三山の取り組みが紹介された。海外ネットワークとノウハウを持つ企業(ワンダートランク社)とDMOの連携の重要性も示された。

 台湾の烏来温泉など温泉地域の今後につながる事例として、黒川温泉・有馬温泉の取り組みも紹介された。地域が一体となった観光地域づくりの成功モデルとしての位置付けである。持続可能な観光地域づくりへの貢献度が高く日本が積極的に推進するアドベンチャーツーリズムと台湾との親和性の高さについても説明が行われた。

 その後、各チームはDXの視点および先駆的DMO・リジェネレーティブツーリズムなどSXの視点を加味したSWOT分析の修正とクロス分析を実施した。最終的に各対象地域の今後の持続可能な地域づくり戦略・提言を取りまとめ、チームごとにプレゼンテーションを行った。

 各チームの発表は多様なパワーポイントスライドや動画を駆使した充実した内容であった。受け入れ環境整備、責任ある観光推進、DMO体制強化、自動運転・MaaSなどのDX推進を積極的に取り入れた提言が示された。発表者それぞれが強い決意を示し、明日の台湾の観光政策推進の原動力となりうる内容であることが認識された。

プレゼンテーション

 

 最後に山下教授が総括として、次世代を担う台湾の観光基幹人材の役割と今後の活躍への強い期待を述べた。参加者から大きな拍手が送られ、参加者全員での記念撮影をもってワークショップは終了した。

 台湾観光局(台湾政府観光署)は今回のワークショップを、観光業界の基幹人材育成と国際競争力強化を目的として企画した。デジタル技術の積極的活用と持続可能性を両立させる「ツイントランスフォーメーション」を台湾の強みとして積極的に推進・浸透させるとともに、産学官が連携して次世代の観光基幹人材を着実に養成する取り組みである。今後の日本の観光立国政策においても参考となる事例として改めて認識された。

山下元教授(前列中央)と参加者達

 
 

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