厚生労働省は8月20日、令和8年熊本地震に伴う経済上の理由によって事業活動の縮小を余儀なくされた事業主を対象に、雇用調整助成金の特例措置を実施すると発表した。生産指標の確認期間を3か月から1か月に短縮するほか、計画届の事後提出を認めるなど、迅速な対応を可能とする複数の特例を盛り込んだ。熊本県内の事業所については残業相殺ルールの撤廃など、さらなる追加措置も講じる。
特例の対象となる休業等の初日は、発災日である令和8年7月28日から令和9年1月27日まで。この期間に開始した休業等が助成の対象となる。なお、助成は1年の期間内に実施した休業等が対象で、上限日数(1年間で100日)に達した場合は上限日数までが助成対象となる。
これらの特例措置は、8月20日に開催された労働政策審議会職業安定分科会で審議・答申を経たものであり、厚生労働省は速やかに関係省令を公布して施行する方針だ。
対象となる「経済上の理由」とは
雇用調整助成金は、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者に対して一時的に休業、教育訓練または出向を行い、雇用の維持を図った場合に、休業手当や賃金等の一部を助成する制度だ。
今回の特例が対象とする「経済上の理由」として、具体的には以下のケースが挙げられている。
- 需要の減少または風評被害による販売・集客の困難
- 取引先の被災による原材料や商品等の取引困難
- 交通の途絶による製品・原材料の運送、従業員の通勤などの生産・販売環境の悪化
- 電気・水道・ガス等の供給や通信の途絶または困難による生産・販売環境の悪化
- 損壊した施設または設備等の修理業者の手配や修理部品の調達等に関して、災害の影響等により期間を要する場合
通常、施設や設備の損壊に伴う事業活動の休止・縮小は助成対象外となる。しかし今回は、地震により施設や設備が直接的な被害を受けた場合であっても、上記のような経済 上の理由を伴うものであれば「経済上の理由があるもの」として取り扱う。損壊と経済的影響が重なるケースにも助成の門戸を広げた形だ。
全国の事業所を対象とした4つの特例措置
全国の事業所を対象として、以下4項目の特例措置が実施される。
生産指標の確認期間を3か月から1か月に短縮
通常、雇用調整助成金の受給には、販売量や売上高等の事業活動を示す生産指標の最近3か月間の月平均値が、前年同期と比べ10%以上減少していることが要件とされる。今回の特例では、この比較期間を最近1か月に短縮し、迅速な特例適用を可能とする。
最近3か月の雇用量が対前年比で増加していても助成対象
通常は、事業所で雇用している労働者および受け入れている派遣労働者の合計人数の最近3か月の平均値が、前年同期比で5%超かつ6名以上(中小企業事業主の場合は10%超かつ4名以上)増加している場合は助成対象外となる。今回の特例ではこの要件を撤廃する。
地震発生時に事業所設置後1年未満の事業主も助成対象
通常、雇用保険適用事業所設置後1年未満の事業主は助成対象外だ。今回の特例では、令和8年7月28日時点において事業所設置後1年未満の事業主についても助成対象とする。この場合の生産指標は、地震発生日前のいずれかの1か月(雇用保険適用事業所設置後であって労働者を雇用している場合に限る)の数値との比較となる。
計画届の事後提出を可能に
通常、助成対象となる休業等を行うにあたっては、事前に計画届の提出が必要とされる。今回の特例では、事後の提出も可能とする。地震発生直後の混乱下での事務負担を軽減する措置だ。
熊本県内の事業所にはさらなる追加措置
熊本県内に所在する事業所については、全国共通の4措置に加え、さらに2つの追加特例措置が実施される。
残業相殺のルールを撤廃
通常、休業等をさせる一方で所定外労働を行わせた場合、支給対象となる休業等の延べ日数から所定外労働時間分が控除される。今回の熊本県内向け特例では、この取り扱いを撤廃する。
教育訓練の実施状況に応じて助成率を引き下げるルールを撤廃
通常、支給日数が30日を経過した日以降の期間について、教育訓練の実施率が10%未満の場合は助成率が引き下げられる。今回の熊本県内向け特例では、この取り扱いも撤廃する。
申請にあたっての留意事項
雇用調整助成金を申請する事業主は、雇用保険の適用事業所であることなどの基本要件を満たす必要がある。
また、助成金を申請した事業主は、提出または提示した書類の写しその他支給要領に規定する各種書類を、支給決定日の翌日から起算して5年間保存しなければならない。
詳細は厚生労働省の雇用調整助成金特設ページに掲載されているガイドブック等で確認できる。




