日本のデジタルノマドビザ、2025年発給646件で前年比2.5倍 33日間で消費額2787万円の地域効果も


 一般社団法人日本デジタルノマド協会(JDNA)は2026年8月3日、外務省が公表した「令和7年査証発給統計」をもとに、デジタルノマド向け在留資格の発給実績を独自に集計・分析した結果を発表した。2025年の発給数は646件と、前年の257件から2.51倍に増加。論点は「何人来たか」から「どこに滞在するか」へと移りつつあるとして、JDNAは3つの地域効果と受入体制の設計を提言した。

 2024年3月、日本は在留資格「特定活動」の枠組みで、いわゆる「デジタルノマドビザ」の運用を開始した。外務省が2026年7月に公表した「令和7年査証発給統計」は、制度導入後2回目となる暦年(2025年1〜12月)の実績だ。

 発給数は646件と、前年(2024年3月31日以降9カ月間)の257件から389件増加した。実質的な発給期間の違いを考慮し、月あたり平均で比較すると1.88倍にあたる。同じ月あたりの平均で見ると、全査証発給数は1.09倍、ワーキングホリデーは1.13倍であり、デジタルノマドビザはこれらを大きく上回る伸びを示した。

発給の裾野も拡大、上位5か国が全体の7割超を占める構図は変わらず

 発給のあった国籍・地域は28から38へ、発給を行った在外公館は58から64へ増加した。一方、上位5か国が占める割合は71.6%から72.4%とほぼ変化はなく、認知は広がったものの国構成比には変化がない状況だ。

 国籍別の上位はアメリカ240件、オーストラリア114件、カナダ46件、ドイツ39件、フランス29件、英国28件。北米・オセアニア・英国の3地域で全体の68%を占める。

 地域別に見ると、最も伸びたのは欧州で、60件から188件へ3.13倍。中東は2件から13件へ6.50倍と倍率では最大の伸びを示した。アジアは30件で絶対数は1.67倍に増えているものの、構成比は7.0%から4.6%へと低下した。

 地域別の発給数と倍率は以下のとおりだ。

  • 北米:131件→286件(44.3%、2.18倍)
  • 欧州:60件→188件(29.1%、3.13倍)
  • オセアニア:45件→126件(19.5%、2.80倍)
  • アジア:18件→30件(4.6%、1.67倍)
  • 中東:2件→13件(2.0%、6.50倍)
  • 中南米:1件→3件(0.5%、3.00倍)

 申請を受け付けた公館では、在シドニー総領事館が57件でトップ。在シカゴ総領事館41件、在メルボルン総領事館38件、在ロサンゼルス総領事館32件、在英国大使館30件が続いた。

世界で始まったデジタルノマド獲得競争、韓国は地域・年齢別に要件を差別化

 世界のデジタルノマドビザは、目的別に大きく2つに分かれる。高度人材の獲得を主な目的として各国で住民登録や国内就労を認める「高度人材就労型」(エストニア、台湾のゴールドカード等)と、海外との契約に基づくリモートワークのみを認め滞在も短期に限る「長期観光型」だ。日本のデジタルノマドビザ(特定活動53号)は後者にあたる。

 韓国は2024年1月から2026年5月まで、ワーケーションビザ(F-1-D)の試験運用を行った。この期間の発給は743人。2026年5月時点で滞在している登録外国人は398人で、うち85%が首都圏に集中した。

 これを受け、韓国法務部は2026年6月30日から正式運用へ移行。最長滞在を2年から3年へ延長するとともに、従来は年齢・地域を問わず一律だった所得要件(1人当たりGNIの2倍)を、年齢が若い層や非首都圏・人口減少地域に滞在する場合はGNIの1〜2倍へ緩和した。

 日本の制度には、年齢や地域による要件の差はない。数を集めるだけでなく、どの地域に、どのように滞在してもらうかに世界から関心が集まっている。

33日間で消費額2787万円——長崎での受入事業が示した地域経済への波及

 JDNAは2025年度、長崎県から「デジタルノマド受入推進事業」を受託し、15カ国から25名を受け入れた。33日間の事業期間中の消費額は2787万円(食費・交通・アクティビティ・交流費の合計)にのぼり、事業費を上回る経済効果を地域にもたらした。

 観光の消費が宿泊と観光施設に集中するのに対し、長期滞在の消費はスーパー、飲食店、理美容、地域の体験へと広く分散する。同じ「消費額」でも、地域に落ちる場所が異なる点が特徴だ。

 JDNAの企業共創委員会では、デジタルノマドを起点にした新規事業・不動産活用・法人向けサービスの実証も進めている。デジタルノマドの受入は観光消費にとどまらず、企業にとっての新市場開拓の入口にもなりつつある。

参加者の約7割が「再訪」か「友人の紹介」——静岡・下田市が積み上げるグローバル関係人口

 静岡県下田市では、デジタルノマドの受入プログラム「TADAIMA SHIMODA」(企画運営:ELENTO合同会社)が2024年から毎年開かれている。2年目となる2025年には、25の国と地域から100人以上が参加した。

 参加した海外デジタルノマドの平均滞在は22日間。訪日外国人旅行者全体の平均泊数9.5泊の2倍を超える長さだ。初年度からの再訪者が34%、過去の参加者から紹介されて訪れた人が36%。合わせて約7割が人とのつながりを介して下田に来訪した。さらに、過去の滞在者3名が2年目の運営メンバーとして企画に携わった。

 訪れる側から、迎える側へ。観光統計には表れない「グローバル関係人口」が、こうした形で地域に積み上がっている。

地元の高校生が世界と出会う——福岡発の国際共創プログラムが始動

 福岡市では2026年、Colive Fukuoka(企画運営:株式会社遊行)と国際教育事業者らが連携し、地元の高校生が海外デジタルノマドに向けて地域の魅力を英語で発信する国際共創プログラムが始動した。

 8月に伝統工芸職人と高校生が対話するスタディツアーを実施。10月には高校生が数十名の海外デジタルノマドを前に英語でプレゼンテーションを行うほか、アイデアソンや、地域の祭りを高校生が英語で案内する企画も予定されている。

「箱」ではなく「人」の育成をJDNAが提言、コミュニティマネージャー養成講座も運営

 3つの効果はいずれも、「何人来たか」ではなく「どう滞在したか」から生まれている。JDNAは、受入体制の設計において「人」の育成が重要だと主張する。

 具体的には、地域ごとに橋渡し人材(コミュニティマネージャー)を置くことを提言。滞在が長くなるほど、必要になるのは案内ではなく日常の支えだとして、ゴミの出し方、病院、地域の行事など、さまざまな領域での橋渡し人材の重要性を指摘する。

 JDNAはコミュニティマネージャー(地域コミュニティと来訪者をつなぐ地域の橋渡し人材)の養成講座「コミュニティマネージャーアカデミー」を運営しており、現在約50名の修了生が全国各地で活動している。修了生は、地域事業者・教育現場・地域コミュニティの橋渡し役として受入の担い手となっている。

 あわせてJDNAは、自治体向け事業者勉強会を通じた自治体連携、政策連携委員会によるビザ制度改善提言、「デジタルノマドブック」(2026年版は10〜11月発行予定)などによる知見の共有を推進している。

 
 

注目のコンテンツ

第39回「にっぽんの温泉100選」発表!(2025年12月15日号発表)

  • 1位草津、2位下呂、3位道後

2025年度「5つ星の宿」発表!(2025年12月15日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第39回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング 」(2026年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト50を発表!

2025年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング」(2026年1月12日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒