登録決定を祝うパブリックビューイング
地域再生の万能ツールではない 登録後の取り組み大事
韓国・釜山で開かれていたユネスコの世界遺産委員会は7月26日、「飛鳥・藤原の宮都」(奈良県橿原市・桜井市・明日香村)の世界文化遺産登録を決めた。国内の世界文化遺産として22件目、自然遺産と合わせると、世界遺産全体では27件目となる。
世界遺産登録は24年の「佐渡島の金山」(新潟県)以来、2年ぶり。奈良県内の世界遺産は4件目で国内最多。
ちなみに、世界全体の登録件数は約1250件(文化・自然・複合を含む)で、登録数が最も多い国(25年末時点)はイタリアの59件。次いで中国57件、ドイツ52件の順。世界的には日本は中上位クラスで、文化・自然遺産の両方を持ち、アジア太平洋地域でも主要な登録国の一つといえる。
飛鳥・藤原の宮都は県内19の遺跡からなる。4代の天皇が政治や儀式を行った飛鳥宮跡(明日香村)、藤原京の中心に位置する藤原宮跡(橿原市)のほか、「飛鳥美人」の極彩色壁画で知られる「高松塚古墳」や「キトラ古墳」(いずれも明日香村)などが含まれる。
高市早苗首相は「日本の宝から世界の宝となったこの貴重な文化遺産を確実に守り、次世代へ着実に引き継いでいく、その決意を新たにした。国内外の多くの方々に現地を訪れていただき、その価値と魅力に触れていただけることを期待している」とのメッセージを発信した。
宿泊施設も期待を寄せる。奈良県旅館・ホテル生活衛生同業組合の伊藤隆司理事長(飛鳥荘社長)は、「登録で奈良市から南への人流ができ、県内を周遊してもらう動きができれば宿泊客の拡大につながると期待している。飛鳥・藤原、平城京と、南から北へ歴史をたどれる奈良だからこそ、歴史を学びながら回ってほしい。県内に泊まってもらうコースづくりなどにも取り組んでいきたい」と話す。
また、登録を祝い、9月1日から一部の組合員施設に泊まった人に限定のペットボトルカバーをプレゼントする。同県が日本一の生産量を誇る靴下の技術を使ったもので、藤原宮の宮殿を飾っていた「蓮華文瓦」などをモチーフにしたデザイン。
登録されると一躍注目が集まり、多くの観光客が訪れる。
例えば、新潟県佐渡市では、佐渡島の金山の登録が実現した24年の観光客数は前年比17.6%増の28万262人だった。勢いは衰えず、25年は同13.9%増の31万9227人が来島。観光客のほか、ビジネス客などを含めた25年の宿泊者数は同8%増の35万524人となっている。
「来島者の増加に伴い、宿泊および観光施設の利用も回復・拡大している。特に、観光施設の入館者数は世界遺産登録効果や観光を目的とした来島者の増加により一定の伸びを示しており、来島者が観光行動へ移行している傾向が見られる」(佐渡観光交流機構)という。
反動で、数年たてば観光客数が減るところも少なくない。世界遺産になった年の年間入場者数は130万人を超えたものの、いまは40万人弱で、ピーク時の28%ほどにとどまっているところもある。
佐渡島の金山は健闘している世界遺産だが、「常日頃から観光誘客を意識し、メディアへの露出も心掛けている」と市観光振興課。地道な取り組みが奏功しているようだ。
登録されれば、経済波及効果も大きく、インフラも整備され、住民自身や文化継承の意欲も強まるとされるが、一方で、ごみや騒音問題、交通渋滞が起こったり、写真だけ撮って帰る観光客もいるため、地域の負担(トイレやごみ処理)が増し、収益は伸びないといった現象も起きる。
世界遺産は地域再生の万能ツールではない。登録を機に、(1)観光と生活のバランス調整(2)住民主体の保全活動(3)長期的な保全計画―などを考えることが重要だ。
次に登録が有力視されているのは滋賀県の「彦根城」だ。2023年の文化審議会では「遺産価値の説明に課題」とされ推薦が見送られたが、地元が再提案し、文化審が今夏に再審議する方針という。
江戸時代の大名統治を象徴する城郭としての価値を持ち、保存状態も良く、国宝天守を持つ数少ない城であることが強みだ。一方で、すでに世界遺産となっている「姫路城」との違いをどう明確化するかという課題もあるとされる。
このほか、暫定リストには神奈川県の「古都鎌倉の寺院・神社ほか」、すでに登録済みだが、追加資産の拡張申請を準備中の岩手県の「平泉―仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群―」が入り、地元の期待も大きい。
また、「錦帯橋」や「四国遍路」なども登録を目指す。
【内井高弘】

登録決定を祝うパブリックビューイング

奈良県旅組が約20の組合施設で配るペットボトルカバー




