島田氏
挑戦できる「余白」を
「観光や地域づくりに関わりたい」。そう語る学生は、決して少なくありません。一方で、その思いを持ちながら、将来の仕事としては別の業界を選ぶ若者も数多くいます。
私は現在、観光庁の後援を受け、大阪観光局と共同で次世代の地域観光人材を育成する実践型プログラム「KLP塾」を運営しています。全国の学生と向き合う中で感じるのは、若者が観光に興味を失っているのではなく、観光業界で働く自分の未来を具体的に描けていないということです。
学生がイメージする観光の仕事は、ホテルや旅館、旅行会社などの接客業務に偏りがちです。しかし実際には、地域ブランディング、観光DX、インバウンド戦略、商品造成、イベント企画、情報発信、交通、行政との連携など、多様な仕事があります。その広がりや、地域の未来を動かす面白さが、若者へ十分に届いていません。
KLP塾では、観光や行政、宿泊、エンターテインメントなど、各分野の第一線で挑戦する方々から学ぶだけでなく、学生自身が地域に入り、現場に触れ、地域が抱える課題と向き合いながら、企画や発信などのアウトプットを重ねていきます。単に知識を得るだけではなく、地域や企業の皆さまと若者が同じテーブルに座り、実践を通じて観光の未来を共に考え、形にしていくことを大切にしています。
若者は、まだ経験も実績も十分ではありません。しかし、固定観念にとらわれない発想や、SNSを通じた発信力、立場の異なる人を巻き込む力を持っています。そして何より、本気で向き合ってくれる大人との出会いによって、大きく成長する可能性があります。
観光業界に必要なのは、完成した仕組みに若者を当てはめることではなく、若者が挑戦できる余白を作ることではないでしょうか。旅館やホテル、旅行会社、自治体、DMOなど、それぞれの現場で、若者をお客さまや労働力としてだけでなく、地域の未来を共に創る仲間として迎えていただきたいと思います。
大阪・関西万博を経て、2030年には大阪IRの開業も予定されています。観光施設や交通、受け入れ環境が発展していく一方で、その地域ならではの魅力を見つけ、人へ伝え、次の挑戦へつなげるのは、最後は人です。
若者が観光業界に憧れ、本気で挑戦し、地域に根を張って活躍できる。その未来をつくることが、これからの観光業界にとって最も重要な投資だと考えています。KLPも、世代や業界を越えて人がつながり、次の観光を担う若者が育つ場所をつくり続けてまいります。

島田氏




