プリンセス・クルーズは7月29日、米アラスカ州の州都ジュノーで2001年に導入した陸上電力供給システムが25周年を迎えたと発表した。同社はクルーズ会社として初めてジュノーで船舶を水力発電による陸上電力供給システムへ接続した事業者であり、四半世紀にわたる取り組みは現在、世界41港における環境負荷低減モデルとして評価されている。
接続1,725回、削減量は8万4,533トン

25年間の主な実績は以下のとおりだ。
- 陸上電力供給システムへの接続回数:1,725回
- 水力発電由来の電力使用量:1億2,366万8,490キロワット時(kWh)
- 温室効果ガス排出削減量:84,533.6トン(CO2換算)
- ジュノー地域へのコミュニティ・パートナーシップ(COPA)クレジットによる還元額:1,124万2,400米ドル
数字が示す規模の大きさ。ジュノーへの陸上電力供給システム導入が、単なる一港の取り組みにとどまらず、業界全体に波及してきたことを裏付ける。
「世界初」を支えた官民連携
2001年当時、大型クルーズ船をジュノーの独立した水力発電による地域電力網へ接続することは、極めて高度な技術力を要するプロジェクトだった。プリンセス・クルーズはジュノー市・郡およびアラスカ・エレクトリック・ライト&パワー(AEL&P)と協力し、世界初となるこの接続を実現。寄港中は船舶のエンジンを停止できるため、排出ガスの大幅な削減が可能となった。
プリンセス・クルーズ社長のガス・アントーチャは次のように述べた。
「この25年間におけるジュノー市・郡およびアラスカ・エレクトリック・ライト&パワー(AEL&P)とのパートナーシップは、クルーズ業界、行政、そして地域社会が共通の目標に向かって協力することで、どれほど大きな成果を生み出せるかを示してきました。プリンセス・クルーズは、世界のクルーズ業界に変革をもたらした陸上電力供給技術の普及を牽引するとともに、アラスカにおける環境保全と地域社会への貢献を実現してきました。お客様が愛してやまない寄港地を守ることは、創業以来変わることのないプリンセス・クルーズの使命です。私たちは、この歩みを誇りに思うとともに、その取り組みをさらに発展させていきます。陸上電力供給システム導入から25年という節目を迎えるにあたり、アラスカにおけるクルーズの未来を支えるイノベーションへの投資を、今後も継続してまいります」
ジュノー市・郡のベス・ウェルドン市長も評価の言葉を寄せた。
「ジュノーは陸上電力供給システム導入の先駆けとなり、その実現を支えた官民連携のパートナーシップが現在も続いていることを大変誇りに思います。この取り組みは、さまざまな関係者が協力することで革新的な成果を生み出せることを示す好例です。今後もジュノーにおける陸上電力供給システムのさらなる普及・拡大に向け、新たな協力の機会を期待しています」
AEL&Pの社長兼最高経営責任者(CEO)、アレック・メスダグ氏も25年の歩みをこう振り返った。
「この25年間、プリンセス・クルーズは、ジュノー港における陸上電力供給システムの導入に向けた重要なパートナーであり続けてきました。当社の小規模で独立した地域電力網にクルーズ客船を接続するためには技術革新、相互の信頼、そして緊密な連携が不可欠でした。プロジェクト当初から、プリンセス・クルーズとこの挑戦に取り組んできた結果、排出ガスの削減や地域の大気環境の改善、地域社会への貢献を実現するとともに、ジュノーを陸上電力供給システム導入の世界的な先進事例として確立することができました」
60年のアラスカ運航、いまも継続する投資
プリンセス・クルーズはアラスカクルーズに約60年の運航実績を持つ。現在もジュノーでは、利用可能な際に陸上電力供給システムを活用し、寄港中は地域の水力発電による電力を使用している。また、保有する全客船でエネルギー効率の向上と排出ガスの削減を図るため、環境負荷の低減につながる技術や運航オペレーションへの継続的な投資を行っている。
業界全体へ広がる課題
プリンセス・クルーズの親会社であるカーニバル・コーポレーション(NYSE:CCL)は、クルーズ業界における陸上電力供給システムの現状と課題についても言及している。
同社が保有する90隻を超える客船の約75%が陸上電力供給システムに対応しており、寄港中はエンジンを停止することで、使用する電力のエネルギー源に応じて温室効果ガスをはじめとする排出ガスを最大100%削減できるという。
一方で、世界の港湾のうちクルーズ客船向けの陸上電力供給システム設備を備えている港は約40港にとどまり、全体のわずか約3%に過ぎないのが実情だ。カーニバル・コーポレーションは世界各地の港湾と連携し、陸上電力供給システムの整備・拡充を推進している。
陸上電力供給システムは、2050年までに運航に伴う温室効果ガス排出量実質ゼロ(ネットゼロ)の実現を目指すクルーズ業界にとって重要な取り組みの一つ。しかし、設備を持つ港が全体の3%にとどまるという現実は、業界全体が抱える構造的な課題を示している。
プリンセス・クルーズとは
「ラブ・ボート」の名でも知られるプリンセス・クルーズは、カーニバル・コーポレーション傘下のクルーズブランド。年間数百万人の旅行者をカリブ海、アラスカ、パナマ運河、メキシカンリビエラ、ヨーロッパ、南米、オーストラリア・ニュージーランド、南太平洋、ハワイ、アジア、カナダ・ニューイングランド、南極、ワールドクルーズなど世界各地へ送り出している。
2025年10月には最新客船「スター・プリンセス」がデビュー。姉妹船「サン・プリンセス」は米国大手トラベル誌コンデナスト・トラベラーの「メガ客船部門第1位」に2年連続で選出されている。




