公益財団法人日本生産性本部は7月30日、働く人の意識や人材育成・働き方等の現状に関する継続調査「第19回『働く人の意識調査』」の結果を公表した。調査は2026年7月6日(月)~7日(火)、20歳以上の日本の企業・団体に雇用されている者1,100名を対象にインターネットで実施。テレワーク実施率が過去最低の14.5%となったほか、AIを導入している職場が全体の26.2%にのぼり、従業員規模で大きな差があることが明らかになった。


景況感と社会経済システムへの信頼
景気が「悪い」「やや悪い」の合計は、前回2026年1月調査の51.3%から56.6%に増加した。一方、「良い」「やや良い」の合計は14.3%から12.1%に微減した。
今後の景気見通しについては、「悪くなる」「やや悪くなる」の合計が前回調査の35.1%から45.8%へと統計的有意に増加。前回調査で改善に転じたが、再び悲観的な見通しが強まった。
様々な社会的制度・システムへの信頼性についても変化がみられた。政府(国)を「信頼している」(「大いに信頼している」「まずまず信頼している」の合計)は、前回2026年1月調査の37.1%から今回調査では30.6%へと統計的有意に減少。都道府県と市区町村への信頼は前回から微減、医療システムへの信頼は前回の55.0%から53.2%へ微減した。物流・金融等経済システムへの信頼も微減した一方、コミュニティへの信頼は地縁・交友ともに微増となった。
勤め先への信頼と雇用・収入不安
勤め先が健康に十分な配慮をしているかという問いに対し、「そう思う」9.7%と「まずまずそう思う」49.7%を合わせて59.4%が肯定的な評価をした。前回2026年1月調査から統計的有意ではないものの微減した。
勤め先の業績(売上高や利益)への不安については、「全く不安は感じない」12.4%と「どちらかと言えば不安は感じない」38.9%の合計は51.3%。2023年7月調査から7回連続で5割以上となった。
今後の自身の雇用については、「不安は感じない」の合計が50.1%で、13回連続して5割を上回った。ただし前回調査で増加に転じた後、今回は再び減少(5%水準で統計的有意)となった。
今後の自身の収入については、「不安は感じない」の合計が36.0%で、前回調査の37.6%から統計的有意ではないものの微減した。「かなり不安を感じる」は22.6%、「どちらかと言えば不安を感じる」は41.4%で、収入への不安が依然として高水準であることが示された。
勤め先への信頼の程度は、「信頼している」9.7%、「まずまず信頼している」46.4%の合計56.1%。前回2026年1月調査から微減したが、統計的有意ではない。
職場へのAI導入は26.2%、規模による格差が鮮明
職場におけるAIの導入状況について、「1年以上前から職場に導入されている」14.5%、「最近1年間に職場に導入された」11.7%で、「導入されている」の合計は26.2%と全体の約4分の1に達した。「職場への導入状況はわからない」は前回2026年1月調査の39.8%から33.4%へ統計的有意に減少しており、AIの導入状況に対する認知が上昇していると考えられる。
従業員規模別でみると、導入率に大きな差が生じている。「導入されている」の割合は、1~100名で14.2%、101名~1,000名で30.0%、1,001名以上で54.0%となり、それぞれの従業員規模間で統計的有意に差があった。大規模企業が比較的早い時期からAIを導入している一方、中小規模企業での導入の遅れが明らかになった。
AIが導入されている職場でその用途を複数回答で聞いたところ、「会議録、要約の自動作成」が53.3%で最多。次いで「テキスト、画像などの生成」40.1%、「WebやデータベースからのWebやデータベースからの情報収集」31.1%、「データ分析・予測」30.1%、「翻訳」27.0%と続いた。
AIが導入されている職場で自身の利用状況を尋ねると(n=289)、「仕事で利用している」は64.7%、「制度上は仕事で利用できるが、使っていない」は29.1%、「制度上利用できない」は6.2%だった。
期待と不安が同時に高まるAIへの意識
職場へのAI導入に関する考えを尋ねたところ、「職場全体の業務の効率化につながる」は58.6%(「そう思う」と「どちらかといえばそう思う」の合計)、「自分自身の仕事の効率化につながる」は55.4%、「斬新なアイディアやイノベーションのきっかけになる」は54.9%と、前向きな回答が前回調査より増加した。
一方で不安や懸念も同時に増加している。「重要情報の漏洩、著作権侵害などをしないか不安である」は56.9%、「AIそのものに対して、漠然とした不安がある」は56.0%、「倫理上不適切な内容や偏見、誤りを含んだものを作り出してしまわないか不安である」は55.5%に達した。
また、今後の自身の雇用に不安を感じる雇用者では、「自分の仕事が奪われたり、仕事を変更させられたりしないか不安である」(「そう思う」と「どちらかと言えばそう思う」の合計)が51.2%と、不安を感じない雇用者の38.4%と比べて統計的有意に高かった。「仕事の評価基準が変わらないか不安である」も、雇用不安あり群で51.0%、なし群で37.5%と、同様に統計的有意な差が生じた。
キャリア形成と人材育成の現状
兼業・副業への意向については、「兼業・副業を行う気はない」が前回調査の69.2%から63.3%へと統計的有意に減少。「現在、兼業・副業を行っている」は7.5%から9.1%へ微増した。雇用不安を感じる雇用者では、「現在行っている」と「将来的には行ってみたい」の合計が47.3%に上り、不安を感じない雇用者の26.2%と統計的に有意な差があった。
自分自身のキャリアプランについては、「特に考えていない」が72.9%となり、調査開始以来最多。「明確なキャリアプランを思い描いている」は5.4%、「大まかなキャリアプランを思い描いている」は21.7%にとどまり、何らかのキャリアプランを持つ者は3割未満だった。
希望する働き方は、「仕事内容や勤務条件を優先し、同じ勤め先にはこだわらない」(ジョブ型)が68.3%と前回調査の66.3%から微増。「同じ勤め先で長く働き、異動や転勤の命令があった場合は受け入れる」(メンバーシップ型)は31.7%だった。ただし、いずれも統計的有意差はない。
条件限定の働き方で重要度1位に挙がったのは「仕事の内容」が最多。次いで「勤務時間」「勤務地」の順となり、前回調査(「勤務地」が「勤務時間」を上回った)から再び「勤務時間」重視の傾向に戻った。
人事評価の望ましい比重(3つの合計を10とした場合)は、「成果や業績」3.5、「仕事を行う能力」3.5、「仕事振りや態度」3.0で、過去調査からほとんど変化がなかった。
Off-JT・自己啓発の状況とAI教育のニーズ
最近3か月(4月以降)のOff-JT実施状況は、勤め先からの「案内により受講した」が5.8%、「案内はあったが受講しなかった」が7.8%、「勤め先から特に案内はなかった」が86.4%だった。
今回調査からOff-JTの受講内容の選択肢に「生成AIを含むAIの利用方法、注意点などに関する知識」を新設したところ、17.2%が選択した。一方、「ICTシステムの利活用」は前回調査の18.8%から7.8%へと大幅に減少しており、AI関連項目へのシフトが示唆される。Off-JT受講内容の最多は「係長、課長、部長等、役職や役割に必要な知識」の32.8%だった。
今後働く中で伸ばしたいスキル・能力(3つまで複数回答)については、「ITを使いこなす一般的な知識・能力(OA・事務機器操作など)」が16.0%で最多。今回新設の「生成AIを含むAIに関する知識・能力」が11.6%で2位、「チームワーク、協調性・協働力」が11.5%、「専門的なITの知識・能力」が10.4%と続いた。「特にない」は42.0%だった。
自己啓発を「行っている」は前回2026年1月調査の10.3%から13.2%へと5%水準ながら統計的有意に増加。「特に取り組む意向は無い」は67.6%から64.2%へと減少した。
自己啓発を行っているまたは行いたい層の目的(複数回答)では、「現在の仕事に必要な知識・能力を身につけるため」が43.9%で最多。次いで「将来の仕事やキャリアアップに備えて」39.3%、「資格取得のため」25.9%、「漠然とした不安を解消するため」18.8%となった。
テレワーク実施率、過去最低の14.5%
テレワーク(「自宅での勤務」「サテライトオフィス等の特定施設での勤務」「モバイルワーク」の合計)の実施率は前回2026年1月調査の15.4%から14.5%へと微減し、調査開始以来の過去最低を記録した。
従業員規模別では、1,001名以上の勤め先で前回調査の25.7%から29.7%へと増加した一方、101~1,000名は18.8%から15.6%に減少、100名以下は10.5%から9.3%へ微減した。年代別では、30代が21.7%と前回から増加した一方、20代は12.5%へと減少。40代以上も13.4%に微減した。
直近1週間の週当たり出勤日数(テレワーク実施者対象)をみると、「5日以上」が32.5%と過去最多、「0日」が10.6%と過去最少となった。オフィス回帰の動きが数値の上でも裏付けられた形だ。
自宅勤務で効率が「上がった」「やや上がった」の合計は、前回調査の80.3%から76.9%へと減少。自宅勤務の満足度(「満足している」「どちらかと言えば満足している」の合計)は前回の88.7%から83.1%へと減少した(いずれも前回調査との統計的有意差なし)。
テレワークの課題(複数回答)については、これまで上位に挙がっていた「部屋、机、椅子、照明など物理的環境の整備」が前回調査の37.3%から26.9%へと5%水準で統計的有意に減少。「特に課題は感じていない」も前回の40.2%から35.6%に低下した。
労務管理上の課題では、「仕事振りが評価されるか不安」16.8%と「業務報告がわずらわしい」16.6%が最も高く、次いで「オフィス勤務者との評価の公平性」17.4%が続いた。「仕事の成果が評価されるか不安」は前回調査より5%水準で統計的有意に減少した。
テレワーク実施者のうち、今後もテレワークを行いたいと「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」の合計は80.0%で前回調査の76.9%から微増した。
育児休業に伴う業務代替、4分の3以上が金銭的支援を希望
育児休業等を取得する同僚の業務を代替することになった場合の勤め先への支援希望について、「人員の追加よりも、手当等の金銭的な支援をしてほしい」が75.1%となり、「金銭的な支援よりも、人員を追加してほしい」(24.9%)の3倍以上となった。前回2025年7月調査(金銭的支援71.5%、人員追加28.5%)からその差はさらに広がった。
ワークシェアリングの是非別にみると、「給与を減らしてでも雇用を維持するべき」とした回答者では「金銭的な支援よりも、人員を追加してほしい」が43.4%と、全体と比べて統計的有意に高かった。一方、「給与は減らさず雇用を削減するべき」とした回答者では「金銭的な支援をしてほしい」が80.4%に達した。
なお、ワークシェアリングについては、「給与を減らしてでも雇用を維持するべき」とする回答が2025年7月調査の24.2%から21.4%へ微減。「わからない」は40.9%から45.6%へと5%水準で統計的有意に増加した。
社会保障の給付と負担の関係については、「給付水準を引き下げ、負担額は現状を維持する」が34.0%で過去最多。「給付水準は維持し、負担額はある程度増やす」は33.0%、「給付水準を大幅に減らし、負担額も減らす」は25.8%だった。
本調査は、2020年5月以降、四半期毎(2023年7月調査より半期毎に変更)に実施されている継続調査。今回が19回目。株式会社クロス・マーケティングが実施し、総務省「労働力調査」の最新結果に基づいて性・年代別にサンプルを割り当てた。




