「世界のサービスはどこへ向かうか」東京で世界8カ国が競う メートル・ドテル・ワールドカップはスペインが優勝


 一般社団法人International Maitre Server Association(IMSA)(東京都港区、高森伯修代表)は10月19、20日の2日間、「HOSPITALITY × OMOTENASHI ACADEMY TOKYO 2026」を開催した。19日は料亭「つきじ治作」、20日は東京国際フォーラムを会場に、世界から集まったトップクラスのサービス人材が競う「メートル・ドテル・ワールドカップ」では、精鋭たちが知識、技術、ホスピタリティ、判断力、料理・飲料、文化理解など、メートル・ドテル(レストラン・ホテルにおける接客・サービス部門の最高責任者)に求められる総合力を競った。

 カフェ・ブラッスリー・ラウンジなど日常の飲食サービスを対象とする「オールデイサービス・ワールドカップ」、受付・コンシェルジュ・販売・案内など業界を超えた接遇力を競う「ゼネラルサービス・ワールドカップ」も開催された。

 メートル・ドテル・ワールドカップの優勝者は、スペインのフランシスコ・マルティネス・ベセラ氏。2位はフランスのセドリック・ローラン・ブリス・コヴァレル氏、3位は日本のヤマモト・ブンタ氏となった。

 

 20日に東京国際フォーラムで行ったパネルディスカッション「なぜ人は、その地域に何度も訪れるのか―食・宿・文化を“また来たい体験”へ変える方法―」には、観光庁観光戦略課専門官の佐藤輝明氏とカトープレジャーグループ代表取締役社長兼グループCEOの加藤宏明氏が登壇。IMSA代表の高森伯修氏がモデレーターを務めた。


左から加藤、佐藤、高森の各氏

 

アジア初開催のワールドカップ 公開決勝にはフランス、日本、スペインが進出

 大会は約20カ国が参加する国際的な広がりを見せた。関連プログラムや各国予選を含む数字だ。最終的にベルギー、フランス、マレーシア、メキシコ、ミャンマー、スペイン、スイスの7カ国が来日し、日本を含む8カ国で競技を行った。

 19日の準決勝では、サービス・文化知識、ワインのブラインドテイスティングやサービス、魚料理・肉料理のテーブルサイドサービス、オーダーテイキングなどを審査した。専門職に求められる能力を多面的に見る内容だ。

 20日の公開決勝にはフランス、日本、スペインが進出した。テーブルセッティング、シャンパーニュサービス、真鯛の外塩包み焼き、スモークサーモン、キャビアサービス、ティーカクテルなどを通じて総合力を競った。

 多くの観客が見守った公開決勝は、サービスの仕事がもつ高度な技術と創造性、判断力、芸術性を広く示す機会となった。

 メートル・ドテル・ワールドカップの優勝者は、スペインのフランシスコ・マルティネス・ベセラ氏。2位はフランスのセドリック・ローラン・ブリス・コヴァレル氏、3位は日本のヤマモト・ブンタ氏となった。

 来場者数は約1000人。各国大使・外交関係者、世界のサービス専門家、企業経営者、教育者、学生、業界関係者、一般来場者が集まった。

 後援・協力などはフランス大使館、メキシコ大使館、食団連、日本ブライダル文化振興協会(BIA)、全国宴会支配人協議会(BMC)、日本キャビンアテンダント協会、ホリプロアナウンス部、HOPSCOTCH Japan K.K.ほか。国際連携はWorld Cup Head Waiter Association、MOFメートル・ドテル協会ほか。主催はIMSA・日本組織委員会。

「おもてなしは、心だけではなく高度な専門技術」 メディアプレビューで強調

 19日に開いたメディア向け会見(メディアプレビュー)でIMSAの高森代表は、「おもてなしは、心だけではなく世界に誇ることのできる高度な専門技術でもある」と開催の趣旨を説明。ヨーロッパのサービス教育や職人文化に学びながら、日本のおもてなしと融合させることがテーマだと述べた。日本とヨーロッパが「架け橋」となり、文化を一つにつなげていく取り組みにしたいとした。

 メートル・ドテル・ワールドカップ会長のセルジュ・ゴーレンプ氏は、フランス国家最優秀職人賞(MOF)の受賞者として登壇した。MOFメートル・ドテル協会会長のディディエ・ガロファン氏も紹介された。MOFは卓越した専門技術を持つ職人に与えられる、フランスを代表する栄誉ある称号と説明された。

 メートル・ドテルは、ヘッドウェイターらとチームワークを築いてレストランを機能的に動かし、美食という料理を確実に届ける芸術的な役割を担う。来年はスペインでの開催が予定されているという。

 高森代表は企業インスペクションにも触れた。申し込み後、年に1度のヒアリングと店舗でのインスペクションの2段階で評価する制度で、ブライダル業界とホテル・レストラン分野の大手企業5社を認定している。

 最後に世界大会会長、MOF関係者、各国代表選手、審査員、日本組織委員会によるフォトセッションを行った。

観光は「自動車に次ぐ輸出産業」 パネルで地方誘客を議論

 20日に東京国際フォーラムで行ったパネルディスカッション「なぜ人は、その地域に何度も訪れるのか―食・宿・文化を“また来たい体験”へ変える方法―」には、観光庁観光戦略課専門官の佐藤輝明氏とカトープレジャーグループ代表取締役社長兼グループCEOの加藤宏明氏が登壇。IMSA代表の高森伯修氏がモデレーターを務めた。

 冒頭、観光庁の佐藤氏が政策の現状を説明した。2025年の外国人旅行者数は約4168万人、旅行消費額は9.5兆円で、いずれも過去最高。2016年策定当時と比べ旅行者数は約1.7倍となった。経済波及効果は約19兆円という。観光は自動車産業に次ぐ輸出分野に位置づけられている。

 

 政府は2030年までに外国人旅行者数6000万人、旅行消費額15兆円の目標を掲げる。9月には世界経済フォーラムの旅行・観光開発指数で日本が世界第1位となった。

 課題はインバウンドの集中だ。宿泊先は3大都市圏が約56%、地方部が34%。消費額は3大都市圏が75%、地方部が約25%だった。オーバーツーリズムによる住民生活への影響も挙げ、観光庁は地方誘客を政策の軸に据えるとした。

 今後の方向性として、3月に策定した観光立国推進基本計画で、次の3本柱を示した。

  • インバウンドの戦略的な誘致と住民生活の質の確保の両立
  • 日本人の国内旅行とアウトバウンドの促進
  • 観光産業の強靭化

 具体策には、オーバーツーリズムの未然防止、地域資源を磨き上げるコンテンツ造成、DMOの基盤体制強化、JNTOを通じた海外発信、人手不足対策を挙げた。事例として愛媛県大洲市の分散型ホテルを紹介した。街の歴史的建物をフロントや客室、レストランに見立て、大洲城に泊まれるコンテンツも展開している。

 加藤氏は、宿泊施設は1泊1万円台から約50万円、レストランは客単価約1500円から約5万円までを手がけると紹介した。小規模高単価のリゾート「ふふ」ブランドでは10カ所の展開を掲げる。銀座では1泊平均25万円で、7割がインバウンド客という。

 加藤氏は「オーバーツーリズムは悪いことだけじゃない」と述べ、京都の混雑で奈良に泊まる選択肢が増えた例を挙げた。「ネガティブをポジティブに変えていく観光施策」が大事だとした。

 情報発信では、AIに選ばれるためのLLMO対策に取り組むと説明した。観光庁や自治体のサイト、Wikipediaなどのフラットな情報源に正確な情報を載せる方針だ。

 佐藤氏は、早朝の茶摘み体験や神津島の星空ツアーなど、日常の資源を時間・空間の視点でコンテンツ化する例を挙げた。最後に、世界が求めるのは「見る観光」ではなく背景にあるストーリーだとして、ストーリーテラーの育成を挙げた。

 

企業・文化・教育の各プログラム

 「ホスピタリティ企業認定フォーラム」では、2026年度最優秀企業に株式会社サイタブリア、おもてなし人財育成賞にザ・キャピトルホテル東急が選ばれた。

 ゼネラルサービスカップのゴールドアワードはホテルのフロントスタッフが受賞した。このほか、学生・若手を対象とした「未来おもてなし大賞 2026」も展開した。

 19日のつきじ治作では特別晩餐会を開いた。礼道清和高森流当主24代目の高森織部 伯修氏(=IMSA高森代表)が亭主を務め、幸若舞、現代アート、書道、茶道、礼法を組み合わせた。食後には立礼茶道で薄茶を提供した。会場では日本酒や日本茶のテイスティング、日本の器のワークショップなども実施した。

 高森氏

【kankokeizai.com 編集長 江口英一】

 
 

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