竹内氏
以前、香川県の農家さんが作ってくださったトウモロコシについて書かせていただいたが、今回は福島県産。西白河郡中島村の野木富士男さんのトウモロコシだ。野木さんには、お米やブロッコリーなど、いろいろお世話になっている。いずれも丹精込めて作られているので、ムチャクチャ美味。トウモロコシも、超甘ウマ。
黄色の粒に、白い粒が混ざったバイカラーコーンだから甘いのかも?という疑問を、直接野木さんに伺ってみた。すると、品種によって味は違うが、甘みに最も影響するのは収穫時期だという。「今だ!」という時期を逃すと、実がパンパンに張って硬くなり、おいしくないのだとか。
また、トウモロコシは収穫直後から甘みが劣化していくので、鮮度も大切。野木さんの場合、早朝に収穫しスグ直送、翌日われわれの手元に届くため鮮度が保たれているが、流通経路によっては数日冷蔵保管し、数量をそろえてから出荷する場合もあり、野菜売り場に並んで消費者が手にするまで2~3日かかることも。
収穫期は、気候と成長具合をにらめっこする日々だという野木さん。今年5月は高温だったのに、その後山背(やませ)が吹いて急に気温が下がったそうだ。山背とは、春から夏に吹く冷たく湿った東よりの風で、冷害を招くといわれる。そこで気温が上がるまで、予定より収穫を4~5日遅らせたところ、幸運にも収穫時には再び暑くなったという。
幸運だったことがもう一つ。例年悩まされていた獣害に、今年は一度も遭(あ)わなかったそうだ。ハクビシンに1本もやられなかったのは奇跡的だと。乾燥ヒトデの粉末でできた忌避剤を使ったのが良かったのかもしれないとのこと。他にも、アライグマやカラスに狙われるそうだ。収穫は数日にわたるが、収穫初日直後に被害に遭うケースが多いという。「収穫したことで、やつらも食べ頃だと分かるんじゃないかな?」と野木さん。アブラムシや毛虫が付いたり、台風で倒れたりと、苦労が絶えないそうだ。
中でも最も大変なのが、収穫作業だそう。2リットルサイズで1本450グラム前後と重いからだ。これを数十本背負って作業しなければならないので、重労働だという。冒頭で述べた香川県のご夫妻も、ご高齢のため今年からトウモロコシ栽培を断念された。他の農作物に比べ労力を要するのに単価が安いこともあり、近年栽培農家が減っているそうだ。野木さんの近隣地域でも、家庭菜園で作る人はいるが、商業用に栽培する人はほとんどいないという。後継者不足も深刻だ。ご自身も、そろそろ体力の限界を感じているとのこと。「そのうち、アレが食べたいなと思っても、食べられない時代が来るかもしれない」と、農業の未来を憂慮された。
生で食べると、フルーツのように甘くてジューシーだと野木さん。来年は生でいただいてみたいと伝えると、何とか頑張りますと力強く答えてくださった。永く続けられることを祈ると同時に、食べる側の応援も必要だと、強く感じた。
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。




