地域との取り組みを続けるなかで、私は、地域の方々が長い時間をかけて紡いできた歴史や文化、産業こそが「縦糸」であり、学生はそこに新しいつながりを生む「横糸」なのではないかと考えるようになった。
八王子の日本遺産「桑都物語」に関わるなかでも、主役はあくまで地域の方々である。織物の技を守る伝統工芸士や織物組合、桑の栽培や桑メニューを育てる生産者・飲食店、地域の本物を伝える学芸員、そして市役所をはじめとする多くの方々。それぞれが受け継いできた思いや営みが、地域を形づくる縦糸となっている。大学や学生の役割は、その縦糸に寄り添いながら、子どもや若い世代、地域を訪れる人々との間に横糸を通すことだと思う。
親子体験では、多摩織伝統工芸士から本物の技を学び、学生がスゴロクやクイズ、工作などを加えることで、子どもたちが楽しみながら織物文化に触れる機会が生まれた。さらに、手織体験と食体験でスタンプを集めるデジタルラリーでは、地域の方々から教わったことを学生の感性でクイズにして伝え直すことで、新たなまち巡りの仕組みを提案している。学生自身も、地域の方々との関わりを通して、教室だけでは得られない学びを重ねている。
桑の食についても、新たな土産品の開発とともに、すでに地域の飲食店で育まれている多彩な桑メニューを、日本遺産「桑都物語」のブランドとして地域全体で高めていきたい。持ち帰る食と、地域を訪れて味わう食の両方を大切にし、桑の食を担う人々の思いや地域の歴史文化を伝える「マイスター」のような仕組みを通じて、地域が主役となる日本遺産ならではの食体験観光を未来へつないでいきたい。
地域の縦糸と学生の横糸が交わることで、「桑都物語」の新しい模様が少しずつ織りなされていく。それは、学生が地域を変えるということではなく、地域が大切に育んできたものを次の世代や新しい来訪者へ手渡していくことでもある。これからも地域の声を何より尊重しながら、学生とともに「横糸」を添え、「桑都物語」の未来の模様の一部を描いていきたい。
(帝京大学短期大学 今野久子)




