日本航空(JAL)は7月21日、米国の次世代航空機メーカーJetZero, Inc.(CEO:トム・オリアリー)と共同で、JetZeroが開発を進める次世代中型民間ジェット旅客機「Z4」プログラムへの参画を発表した。
両社は運航・整備・設計の各面で協業することに合意。機体開発の初期段階からJALが長年培ってきた運航・整備ノウハウを反映させ、2030年代初頭の商業運航の実現と、航空業界が掲げる2050年CO2排出量実質ゼロの達成を目指す。

翼と胴体が一体となった革新的設計「BWB」
「Z4」は、翼と胴体が一体となった革新的な翼胴一体形状「BWB(Blended Wing Body)」を採用した次世代ジェット旅客機だ。
主翼全体で揚力を生み出すことで空気抵抗を大幅に低減し、現行の中型機と比較して30〜50%の燃費改善と運航コストの削減を目標としている。
機体仕様は標準座席数250席、航続距離は約9,300kmクラス。東京〜アメリカ西海岸北部を運航可能な航続能力を持つ。
客室環境については、従来の航空機とは異なる広々とした空間により、乗客や乗務員に快適な環境を提供するとしている。
インフラ適合性も大きな特徴のひとつだ。独自の形状でありながら、既存の空港インフラ(駐機場や旅客搭乗橋など)に対応可能な実用性を兼ね備えた設計となっている。
協業の3本柱——基本仕様策定、運用検証、MRO体制構築
両社の協業は、2030年代初頭の実用化(型式証明の取得など)を見据え、主に3つの分野で展開される。
第一は「次世代機『Z4』の基本仕様策定」だ。JetZeroの最新の開発状況に基づき、JALの運航、客室サービス、機体整備、およびグランドハンドリングにおける高度な知見・要件を、設計初期段階から「Z4」のベースライン仕様へ反映するための協議・検討を行う。
第二は「空港インフラおよび運用方法の検証」。独自の形状を持つBWB機の導入を見据え、既存ゲートの運用方法や効率的なグランドハンドリングに関する共同検討を進める。
第三は「将来的なMRO(整備・修理・オーバーホール)事業体制の検討」。就航後の安定運航を支えるため、次世代機に適したJetZero指定MRO体制の構築と、新たな整備事業機会の創出に向けた検討を実施する。
JALの機材戦略における位置づけ
JALは、高効率かつ環境負荷の少ない航空機へのニーズが世界的に高まる中、中長期的な機材戦略の一環として、将来の選択肢となる新たな航空機導入の可能性について検討を進めてきた。
その中で「Z4」の優れた環境性能と経済性に着目し、将来の機材戦略における有力な選択肢として本プログラムへの参画を決定した。
JAL執行役員 経営企画本部長の鈴木隆夫氏は次のようにコメントしている。
「次世代航空機『Z4』の開発において、JetZeroとの協業を開始できることを大変光栄に思います。革新的な翼胴一体形状を採用し、高い燃費効率と快適性を両立させた『Z4』は、2050年のネット・ゼロ・エミッションという航空業界の重要な目標達成に向けた大きな一歩となります。JALは将来の持続可能な航空輸送を支えるため、今後も技術革新と環境負荷低減に積極的に取り組んでまいります」
JetZeroのCEO兼共同創業者トム・オリアリー氏も次のように述べている。
「2030年代初頭のZ4市場投入を目指す私たちの目標は、『JALグループ経営ビジョン2035』と完璧に合致するものです。JALは、優れた顧客体験を提供しながら、持続可能な形でネットワークを拡大しています。私たちは、JALのニーズに応えるべく、今後より一層、両社の協力関係を深めていきたいと考えています」
新たな航空機開発に航空会社が初期段階から関与する意義
両社は、新たな航空機開発において初期段階から航空会社のニーズを反映させることが、実用性と安全性を高めるために極めて重要であると強調する。
日本のエアラインの高度な知見を取り入れることで、機体の実用性と安全性を極限まで高めることを目指すとしており、両社の強みを融合させることで航空市場の更なる発展に寄与していく方針だ。
JALとJetZeroについて
JAL(日本航空株式会社)は1951年に設立。oneworld®アライアンスのメンバーとして、2026年3月時点で234機の航空機を保有し、提携パートナーとともに世界71カ国・413空港へのネットワークを展開している。
英国の航空会社評価機関Skytrax社の「5-Star Airline」、北米を拠点とする航空非営利団体APEXの「World Class」にも認定されている。ブランドスローガン「Soaring Together」のもと、「JALビジョン2035」の実現に向けた取り組みを進める。
一方のJetZeroは2021年に設立された米国の航空宇宙企業。次世代の民間・防衛用航空機の開発を手掛け、主要なメーカーや技術プロバイダーと提携しながら、革新的な技術と米国の製造能力を活用して航空の未来を切り拓くことに取り組んでいる。




