「観光はゴールではない」—— 日本地域国際化推進機構、元参議院議員・吉川ゆうみ氏を共同代表理事に迎え新生組織として再始動


 一般社団法人 日本地域国際化推進機構(NEXTOURISM)は2026年7月22日、組織体制と活動領域を刷新し、「新生NEXTOURISM」として再始動することを発表した。

 共同代表理事制を新たに導入し、代表理事の伏谷博之氏に加えて元参議院議員の吉川ゆうみ氏が共同代表理事に就任。理事には弁護士の齋藤貴弘氏を新たに選任し、9名体制に拡充する。活動領域は、従来の観光DXを軸とした取り組みから、観光を入口とする5つの地域文化資源領域へと拡張。「観光はゴールではない。都市が未来と向き合うための方法である」——同機構が掲げるこの言葉が、再始動の核心を示している。

 

フェイズ1の完了——5年間の歩みと社会的合意の成立

 NEXTOURISMは2021年1月の発足以来、「観光新時代」を提唱し、観光DXを軸に、観光客と住民の双方が利益を享受する国際文化観光都市づくりの浸透に努めてきた。

 フェイズ1(2021〜2026)の主な歩みは以下の通りだ。

  • 2021年1月 機構発足。コロナ禍による行動変容を起点とした「観光新時代」を提唱し、オンラインシンポジウムを開催
  • 2021年9月 「NEXTOURISM自治体プログラム」提供開始(伊勢市・豊島区・阿蘇市と提携)
  • 2022年〜 講演会シリーズ「NEXTOURISMアカデミー」・ワークショップ・年次シンポジウムを継続開催
  • 2023年 観光庁 観光再始動事業に参画。伊勢神宮・伊勢市で、ターゲットの興味関心を起点とした説明戦略の構築とインタープリター養成を担い、インタープリテーションツアーを造成
  • 2024年 観光庁「日本的寛容の発見」事業を実施。インタープリテーションのメソッドを軸に、京都・石川・富山を跨ぐ富裕層向け文化観光体験の高付加価値化に取り組む
  • 2024年 伊賀市の日本遺産魅力増進事業に協力。「忍者インタープリター」の育成・組織化に向けた基礎セミナーを実施
  • 2025年12月 株式会社JTBコミュニケーションデザインと共同で、アフター万博の大阪の未来ビジョンを探る対話イベント「DIALOGUE FOR THE FUTURE CITY OSAKA」を開催

 なかでも、地域の文化資源が持つ本質的な価値を、相手の興味関心を起点に伝える「インタープリテーション」と、その担い手であるインタープリターの養成は、機構が国の事業や地域との協働を通じて継続的に磨いてきた中核の方法論だ。

 2026年3月27日に閣議決定された第5次観光立国推進基本計画には、「地域住民と観光客双方の満足度」の向上が基本的な方針に掲げられた。文化資源の魅力を伝える解説作成やその担い手となる人材の育成・確保、職業としてのローカルガイドの確立が施策に明記されるなど、NEXTOURISMがこれまでの活動を通じて提起してきた問題意識が取り込まれた。

 設立からのフェイズ1の役割は、社会的合意の成立をもって一区切りを迎えた。

 一方で、この5年間に観光領域単独の枠組みでは解ききれない構造的な課題も明確になったと同機構は説明する。都市と地域の国際化、観光・文化資源の評価と活用、資金調達の選択肢の拡充、国際的視野を持つ人材の育成、分野横断的な現場対応力——いずれも観光の枠内にとどまらない広がりを持つ課題だ。

5つの注力領域へ——観光を入口とした地域文化資源の統合的展開

 同機構は「都市や地域の国際ブランドは観光だけで構築されるものではない」とし、食、伝統工芸、アート、デジタル、コンテンツIPなどが一体となってはじめて、地域の文化的な実力が国際的な意味へと翻訳されると説明する。

 新生NEXTOURISMが拡張する5つの注力領域は以下の通りだ。

  • 観光まちづくり/地方創生
  • 食と一次産業
  • 伝統工芸とアート
  • デジタルアート/AI
  • 音楽などのコンテンツIPを生かした地域活性化

 これらはいずれも観光と切り離された別事業ではなく、「観光が成立するための地域文化資源群」として位置づけられている。

中間組織としての3つの役割

 新生NEXTOURISMは、都市と地域の国際化に資する価値創造を担う中間組織として、具体的に次の3つの役割を地域の文脈で連結して担うとしている。

 まず「評価」。国際標準による評価を地域に持ち込み、自治体・DMOと接続する。

 次に「プロジェクト組成」。産官学・国際パートナーを巻き込んだ事業を組成し、政策・資金へ接続する。

 そして「自走化と伴走」。自走段階で運営を地域に手渡しつつ、企画・ネットワーク・方法論で関与を続ける。

 あわせて、シンクタンクとドゥタンクを兼ね、省庁横断の支援策を地域起点で動かす中間組織として、政策資源と地域の現場の接続を中核機能としていく方針だ。

9名体制の新理事陣——共同代表理事制の導入

 組織体制の再編も大きな柱だ。共同代表理事制を導入し、代表理事の伏谷博之に加え、吉川ゆうみが共同代表理事に就任。理事を9名体制とし、吉川ゆうみ・齋藤貴弘を新たに選任する。あわせて業務執行理事制を新設し、執行と監督を分離する。

 理事9名の布陣は以下の通りだ。

  • 共同代表理事 伏谷博之(ORIGINAL Inc. 代表取締役 / タイムアウト東京代表)
  • 共同代表理事(新任) 吉川ゆうみ(名古屋芸術大学 特別客員教授 / 元参議院議員)
  • 理事(新任) 齋藤貴弘(渥美坂井法律事務所 弁護士 / ナイトタイムエコノミー推進協議会 代表理事 / 一般社団法人ザ・クリエイション・オブ・ジャパン(CoJ)代表理事)
  • 理事 國友尚(アソビジョン株式会社代表取締役 / 慶應義塾大学感動研グループ長)
  • 理事 牧野友衛(一般社団法人メタ観光推進機構 代表理事)
  • 理事 田端浩(株式会社BRIDGE MULTILINGUAL SOLUTIONS 取締役 / 公益財団法人 交通エコロジー・モビリティ財団 会長 / 元観光庁長官)
  • 理事 野澤弘樹(一般社団法人 デロイトトーマツ戦略研究所 理事)
  • 理事 矢ケ崎紀子(東京女子大学現代教養学部教授)
  • 理事 竹中直純(株式会社メタコード 代表取締役 / デジタルハリウッド大学院教授)

新任役員のプロフィール

吉川氏

 共同代表理事に就任する吉川ゆうみ氏は、1973年三重県生まれ。欧州系審査会社で環境・サステイナビリティ、農業・食、品質などの審査・コンサル業務に従事した後、三井住友銀行 上席部長代理として社会的課題解決に資する金融商品開発、企業支援、スタートアップ支援等に従事。2013年より参議院議員を務め(〜2025年)、参議院 文教科学委員長、経済産業大臣政務官、内閣府大臣政務官、外務大臣政務官、自民党副幹事長、自民党女性局長等を歴任。自民党ナイトタイムエコノミー議連、ラグジュアリー観光議連の設立時より参画し、自民党アート市場活性化委員会では長年事務局長を務めた。専門は、観光、地方創生、アート、環境・サステイナビリティ、国際協力、食・農林水産業、経済産業分野等。現在は名古屋芸術大学 特別客員教授。

 

 

齋藤氏

 

 理事に就任する齋藤貴弘氏は、渥美坂井法律事務所 弁護士。一般社団法人ナイトタイムエコノミー推進協議会 代表理事、一般社団法人ザ・クリエイション・オブ・ジャパン(CoJ)代表理事も務める。弁護士として各種法務コンサルティングを行うとともに、ルールメイキングを通じて新たな市場の創出を支援。ナイトエンターテインメントを規制する風営法の改正を主導し、改正後はナイトタイムエコノミー政策の立案・実装に携わってきた。近年は、伝統文化や歴史的建造物、国立公園等の自然資源、エンターテインメントをはじめとするコンテンツ・IP領域など分野を横断して活動。著書に『ルールメイキング―ナイトタイムエコノミーで実践した社会を変える方法論』(学芸出版社)がある。

代表両名のコメント

 代表理事の伏谷博之氏は次のようにコメントしている。

 「都市と地域を国際市場とどのように接続できるのかが重要さを増しています。訪日観光はインバウンド市場の拡大を目指しますが、役割はそこに留まりません。アウトバウンドも含めた2つの国際市場の間に立ち、橋渡しに貢献する必要があります。アウトバウンドとは、地域のコンテンツや地産品の世界での存在感を高め、消費を促すことです。新生NEXTOURISMは、都市と地域の国際化=国際市場への接続を支援します。地域に眠る価値を分野横断的に掘り起こし、統合的な戦略・計画をもって、事業としての自走化を目指します。世界から学び、世界市場に打って出る。吉川ゆうみさん、齋藤貴弘さんが共同代表理事・理事として参画し、NEXTOURISMの強みである、様々な分野の第一線の専門家の集積は、さらに厚みを増しました。理事、顧問、エキスパートネットワークで構成されるNEXTOURISMは、それ自体が、分野横断的な知恵と経験を集めた組織です。この布陣で、慣習にとらわれない市場開拓を目指します」

 共同代表理事に就任する吉川ゆうみ氏は次のようにコメントしている。

 「コンサルタント、金融、政治という立場から、地域の企業や産業、人々に寄り添い、地域活性化に取り組んできました。政治家としての12年間は、食・歴史・文化・自然といった各地固有の価値を結びつけ、世界のニーズを見据えて磨くことで地域の力を日本の発展につなげられると確信し、挑戦をしてきました。観光産業は成長局面にあるものの、地域や都市が持つ価値を引き出し、人々の豊かさや誇りに結びついているとは未だ言い難い状況です。国宝などの伝統文化・産品・アニメ・映像・音楽・ゲーム・現代アート・食・健康・美など世界に誇るコンテンツも、海外で高く評価されながら日本発・世界基準で発信しきれておらず、本来得られるはずの利益や評価が日本に還元されていないのが現状です。デジタルやAIも活用し、日本の多様な価値を世界へ届け、地域や都市の魅力を経済的価値に変える。そんな世界から羨望を集める成長モデルを築きたいと考えています。地域の力を未来へつなぎ、日本の新たな成長に貢献できるよう、全力で取り組んでまいります」

今後の予定

2026年8月にキックオフ会を開催し、新しい活動方針などについて公表予定だ。

 一般社団法人 日本地域国際化推進機構(NEXTOURISM)の公式サイトはwww.nextourism.jpで確認できる。

 
 

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