取材にせよ、個人的な旅行にせよ、海外に行く場合、ガイドブック『地球の歩き方』を見て概要をつかむのが筆者のやり方だ。そのうえで、関連するウェブサイトなどで詳しい情報を得る。取材の場合はとりわけ下調べが欠かせない。
というわけで、筆者の本棚には10冊近いこの本が収められている。ご存じの向きも多いだろうが、同書は国別、地域別に発行されていて、その地域の地図があり、旅情報としては、日本からの航空便、空港からのアクセス、バスや電車の移動手段とその運賃、そして肝心の見所やホテル、レストランなどが紹介されている。分厚い本なので、必要箇所をコピーして持って行くことにしている。
ところが、若い友人に『地球の歩き方』の話をしたところ、「それなんですか」と言われてしまった。彼らは、ガイドブックはもちろん旅の雑誌なども手にしない。旅行雑誌を編集してきた身にとっては何とも寂しい話だ。さらに話を進めると、彼らが海外旅行の旅前情報として利用しているのはウェブサイトでもないこともわかった。一体何を頼りにしているかというと、TikTokやInstagramなどのSNSだという。
こうしたSNSに行きたい国や地域のキーワードを打ち込むと、たちどころに多数の体験情報が浮かび上がる。年1回発行されるガイドブックなどに比べ、ほぼリアルタイムの生の情報が得られるのがSNSの強みだろう。
遅ればせながら、若者の旅情報取得のやり方を知ったと思っていたら、さらに別の方法があることを教わった。それは、生成AIを使って旅行プランを立てることだ。
例えば9月初めにベトナムを旅したいとする。旅行期間は5泊6日、女性同士の2人旅で、見所やグルメ、かわいい雑貨を買い求めたい、民族衣装アオザイを試したいなどと書き込むと、ベトナムまでの航空便、費用、滞在都市などが示される。
これで驚いてはいけない。海外のOTA(インターネット専業旅行会社)は生成AIを使い、お勧めの旅行プランを作ってくれる。それを参考に航空券やホテル、鉄道、レンタカーなどの予約をすれば簡単に旅程が組み上がる。100%信頼に足ると思わないわけにはいかないが、便利この上ない。信頼に足るかと疑問を持つのは、一部の海外OTAのサイトを利用した際のフィッシング詐欺などが話題になっているからだ。
旅行関連でも生成AIはすさまじい勢いで広まっている。生成AIを使った旅行プランの作成が広まれば、旅行会社の存在は薄れる。ただ、パッケージ旅行を利用して、経験と知識が豊富な添乗員の手を借りて気楽にゆったりと旅をしたいという人たちもいる。航空券やホテルの予約をOTA経由でやるのが難しいし、面倒くさいと感じても不思議はない。筆者もOTAでホテルを予約して予約日を間違えて現地で困ったことがあった。ちょっとしたパソコンのキーボードの打ち間違えだったのだろう。
それでは旅行会社がパッケージ旅行派に対し、できることは何だろうか。それは日本旅行業協会(JATA)などが掲げている、旅行会社ならでは可能な高付加価値の旅行商品を造成することだ。それが旅行会社の真骨頂だろう。
(日本旅行作家協会常任理事、元旅行読売出版社社長)




