フル活用者は年間約6.6万円の節約効果 「たまにの余暇」から「日常の支出抑制」へ
株式会社ベネフィット・ワンは6月11日、民間企業の正社員として働く20代~60代の男女1,000人を対象に「ビジネスパーソンの福利厚生に関する意識・実態調査」を実施した結果を発表した。
調査では、ビジネスパーソンの88.0%が福利厚生をメリットを得るための「生活に必要な知識」と認識している一方、実際に十分に活用できていると感じる人は16.1%にとどまることが明らかになった。認知と行動の間に大きなギャップが存在する実態が浮き彫りになった形だ。
調査は2026年5月21日から25日にかけて、インターネット形式で実施。対象は全国の20代から60代の働く男女1,000名で、内訳は一般社員800名、経営者100名、人事総務100名。調査協力は株式会社ネオマーケティングが担当した。
活用できている層は月5,513円、年間約6.6万円の節約効果
福利厚生制度を活用できていると感じる人が月間に得ている節約効果は、加重平均で月額5,513円。年間換算では約66,000円、10年累計では66万円超に相当する。
企業規模別・属性別にみると、従業員1,000人以上の大企業では月額6,236円、経営者では月額7,806円と、規模や立場によってさらに恩恵が大きくなる傾向が確認された。
一方、全体の41.2%が「あまり・まったく活用できていない」と回答。活用できていない理由(複数回答)の上位は、1位「忙しくて時間がない」(21.8%)、2位「手続きが面倒」(21.4%)、3位「何が使えるかわからない」(20.4%)、4位「制度についての案内・周知が十分でないと感じる」(19.4%)、5位「制度に魅力を感じない」(18.7%)という結果だった。
「知っている人ほど得する仕組み」と9割近くが実感
福利厚生が「知っている人ほど得をする仕組み」だと思うかという問いに対し、「強く思う」が34.0%、「やや思う」が54.2%で、合計88.2%が肯定的に回答した。
日々の暮らしに役立っていると感じる取り組みとして「NISA・iDeCo」(36.9%)、「ふるさと納税」(33.8%)とほぼ同水準で「福利厚生の活用」(36.6%)が挙げられており、生活防衛策としての存在感が高まっていることが示された。
88.0%が「福利厚生は日々の暮らしを支えるための知識・対策のひとつ」と認識しており、生活防衛策としての認知は着実に広がっている。ただし、自社の制度を「十分理解している」従業員は29.8%にとどまった。
企業側と従業員側に「周知」の認識差
自社の福利厚生制度の周知状況について、経営者・人事担当者の85.5%が「周知できている」と感じているのに対し、従業員の4人に1人(23.8%)は「情報が十分に届いていない」と回答。企業側と従業員側の間に認識の差があることが確認された。
具体的には、従業員全体のうち「十分に説明・周知されている」が30.8%、「説明・周知されているがやや不足に感じる」が45.4%、「あまり説明・周知されておらず不足に感じる」が19.5%、「説明・周知はされていない」が4.3%。不足に感じる計は64.9%に上った。
「支出削減系」の利用が過半数 20代の6割が節約目的で活用
「利用することがある福利厚生」として、食事補助や日用品割引などの「支出削減系」(食事補助、各種クーポン、日用品割引、カフェ割引、住宅補助、通信費補助)が51.0%と過半数を占めた。宿泊補助やレジャー割引などの「余暇系」(宿泊補助・保養所、レジャー割引、映画館利用補助、ジム・フィットネス補助、推し活休暇・エンタメ補助・趣味支援など)は33.5%だった。
直近1年以内の利用においても「支出削減系」が45.4%、「余暇系」が27.4%となり、生活防衛型の活用が顕著に表れた。
世代別に直近1年以内の「支出削減系」利用率(一般社員)を比較すると、20代が59.5%に対し50代は26.5%と33ポイントの差が生じた。20代が「日頃の節約ツール」として活用している一方、50代では「宿泊補助・保養所」など余暇用途での利用も見られ、世代によって福利厚生の使い方が異なることが示された。
求める福利厚生の1位は「食事補助」 「推し活支援」は1割程度
今後あったらよい福利厚生(複数回答)を聞いたところ、1位「食事補助」(43.8%)、2位「住宅補助」(41.5%)、3位「光熱水費・通信費補助」(41.4%)と、日々の生活に直結する支援策がトップ3を占めた。
以下、「医療費補助」(33.1%)、「日用品・クーポン割引」(30.0%)、「子育て支援」(21.7%)、「介護支援」(21.5%)、「特別休暇制度」(21.0%)、「フレックス」(19.8%)、「レジャー割引」(18.3%)、「映画割引」(18.2%)、「リモートワーク支援」(17.9%)、「ジム・健康支援」(13.8%)、「学び・資格スキル取得支援」(13.4%)、「制服・副業支援」(11.3%)、「美容補助」(11.3%)、「推し活支援」(10.7%)と続いた。
「生活防衛系」(食事補助、日用品・クーポン割引、住宅補助、光熱費・通信費補助、子育て支援、医療費補助、介護支援)の小計は84.4%に達した。一方、「推し活支援」(10.7%)や「美容補助」(11.3%)といった個性的な福利厚生を求める声は1割程度にとどまる。
実際に勤め先に導入されている「推し活休暇、エンタメ補助、趣味支援など」も10.5%と同水準であり、従業員が求める制度と実際に導入されている制度の傾向が一致していることも確認された。
20代は「給与」と同等に「福利厚生」を企業選びの基準に
企業を魅力的に感じる要素(複数回答)を聞いたところ、全体では「給与」(58.3%)が1位、「福利厚生が充実している」(47.3%)が2位、「有給取得のしやすさ」(46.6%)が3位、「職場の人間関係」(45.8%)が4位、「企業の安定性」(39.3%)が5位だった。
一般社員の20代に絞ると、「給与」(47.5%)と「福利厚生の充実」(44.5%)の差はわずか3ポイントにとどまり、若い世代ほど採用時の選択基準として福利厚生を重視していることがわかった。
重視して入社しても4割近くが「活用できていない」
転職・就職時に福利厚生を「非常に重視する」と「やや重視する」を合わせた「重視する」層は86.3%に上る。しかし、福利厚生を「重視した」層に限定した場合でも、38.1%が現在の制度を「あまり・まったく活用できていない」と回答した。
入社前の期待が高いにもかかわらず、入社後には日々の忙しさや手続きの壁に阻まれ、制度を十分に活用できていない実態が明らかになった。
専門家コメント
千葉商科大学会計大学院の可児俊信教授は、今回の調査結果について次のように述べている。
「従業員は、これまで給与と手当に生活支援の役割を求めてきた。一方、福利厚生には日常生活に上乗せする『ゆとり』を求めてきた。社宅や保養所といった福利厚生で家族をふくめて『ゆとり』ある生活が実現されてきた。しかし、物価上昇や手当の廃止・縮小が続く中で、従業員は福利厚生に生活支援の役割が求め始めていることが、このアンケート結果から読み取ることができる。これにより、福利厚生は今まで以上に従業員の生活に浸透し、利用が進むことが期待される。」
可児教授は1996年より福利厚生・企業年金の啓発・普及・調査および企業・官公庁の福利厚生のコンサルティングに携わり、年間延べ700団体を訪問して現状把握と事例収集に努めている人物だ。
今回の調査を実施したベネフィット・ワンは、1996年3月15日設立。東京都新宿区西新宿3-7-1新宿パークタワー37階に本社を置き、代表取締役社長は羽生和之氏。福利厚生事業をはじめ、ヘルスケア事業、インセンティブ事業、購買・精算代行事業、パーソナル事業、CRM事業などを手がける。第一生命グループの一員でもある。




