かつての旅館・ホテルでは、理不尽な要求に現場が悩まされることが、今よりずっと多かった。満室になる繁忙日には苦情がほぼ決まって持ち上がり、その日の対応役をあらかじめ決めておく宿も珍しくなかった。落ち度の有無にかかわらず宿泊費の返金を強く求められることもあり、長時間拘束され、謝罪を重ねるうちに疲れ果てて辞めていく従業員もいた。「お客さまは神様」という言葉が当然とされた時代、現場はこうした理不尽を受け止めるしかなかった。
今は、こうした場面はずいぶん減った。宿泊するのは大半が一般の客で、度を越した客の割合は下がっている。ただ、カスハラそのものがなくなったわけではない。形を変えて続いている。今のカスハラの多くは、宿泊費の値引きや無料化を引き出すために行われる。騒げば値引く、返金するという対応が宿に染みつけば、それを狙う客を呼び込むことになる。
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